出版社内容情報
「あなた」の声が心に響く。夫・永田和宏、長男・永田淳、長女・永田紅の三歌人が編む決定版セレクション。
内容説明
「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」二〇一〇年八月、この歌をさいごに遺して、現代短歌を代表する女性歌人・河野裕子は世を去った。その生涯につくられた歌のなかから、夫、永田和宏、長男・永田淳、長女・永田紅の三歌人が千五百首あまりを選ぶ。十五ある歌集すべての書影・あとがき、年譜も収録。また歌集それぞれに編者の書き下ろしエッセイを付す。夫を、子を、自然の生きものを、そして歌を、全身全力で愛して逝った歌人の、決定版アンソロジー。
目次
森のやうに獣のやうに
ひるがほ
桜森
はやりを
紅
歳月
体力
家
歩く
日付のある歌
季の栞
庭
母系
葦舟
蝉声
著者等紹介
永田和宏[ナガタカズヒロ]
1947年生。歌人、細胞生物学者。京都大学名誉教授、京都産業大学総合生命科学部教授。宮中歌会始詠進歌選者、朝日歌壇選者、「塔」選者。現代を代表する歌人として、若山牧水賞、読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、迢空賞他、受賞多数。紫綬褒章
永田淳[ナガタジュン]
1973年生。歌人、出版社・青磁社代表。「塔」選者。歌集に『1/125秒』(現代歌人集会賞)
永田紅[ナガタコウ]
1975年生。歌人、生化学研究者。「塔」所属。京都大学特定拠点助教。歌集に『日輪』(現代歌人協会賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
16
圧倒された。これが歌の力なのか。著者のことをさらに知りたい。2019/03/01
てん
15
図書館本。永田和宏、河野裕子一家の歌集を読んでいる。永田和宏作品集を半分ほど読んでからこちらを読んだ。若き永田和宏の気負った、難解と思える歌と比べ、この自然体な歌はどうだろう。河野裕子は、安っぽい言葉だが、やはり短歌の天才だった。病を得てから詠んでいる歌は不思議な感覚に満ちている。癌再発後の歌は壮絶というほかないが、短歌という手段があったからこそ、その時の状況、感情がそのまま手にとるように感じられる。あわせて、家族である歌人の永田和宏、永田紅の歌集をこれから読んでいく。2021/11/21
チェアー
11
断片的に読んできた歌も、まとめて時系列を追って読むと、歌い手の姿が微かに見えてくる。一人の希望と不安を抱えた少女が結婚し、子どもを産み、年を取り、死んでゆく。そんな普通だけど特別な生きざまが見えてきた。自分を込めた歌が残ると、肉体は滅んでも存在は滅びないんだなと感じる。自分は何を残せるのだろう。2016/10/14
はち
8
河野裕子さんが遺した15冊の歌集。それを夫と子供達がさらに選歌した、まさに河野裕子さんのエッセンスとも言える一冊。比較的容易に全体像を見渡せるが、やはり全歌集が待たれる。2016/09/04
Shinji0001
4
最後のページの三首を、繰り返し繰り返し声に出して読んだ。涙声になっていくのが自分でも分かる。 なんという生への執着。息を吐くように歌を生み出した歌人「河野裕子」は、まだまだ歌えるのに、吐き出す息が足りなくなって遂にその一生を閉じた。彼女は、まさに最後のその一瞬まで、ゆるぎない「歌人」だったのである。2020/01/21