出版社内容情報
量子力学は古典力学を内包する,と教科書にはある。それを具体的に示せ,と言われたらどうすればよいか。ニュートン方程式とシュレーディンガー方程式をどんなに見比べていても答えは出てこない。はたして両者の根本的な違いは何か。それに答えるのが本書の目的だ.初学者も量子論をわかったつもりの人にも再考を迫る好著である。
内容説明
量子力学は古典力学を含むだろうか極限操作の物理的意味を探る。
目次
1 古典から量子へ(前期量子論を学ぶ意義;周期運動に対する古典量子化条件 ほか)
2 量子から古典へ(古典論への回帰;交換子の古典極限とポアソン括弧 ほか)
3 漸近展開とWKB解析(プランク定数ゼロの極限;反射係数に見られる特異極限 ほか)
4 絡み合う特異極限(ナビエ‐ストークス方程式とシュレーディンガー方程式;古典カオスのもつ特異性 ほか)
著者等紹介
首藤啓[シュドウアキラ]
1960年生まれ。1989年早稲田大学大学院理工学研究科物理学及応用物理学専攻博士後期課程単位取得退学。現在、首都大学東京大学院理工学研究科物理学専攻教授。専門は、非線形動力学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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古典論から量子論へ向かう Bohr の量子化条件や, 量子論から古典論へ向かう Planck 定数ゼロの極限といった, 古典論と量子論の間の「対応原理」はそれほど簡単ではないという指摘. WKB 近似が漸近展開であることが特異性を生むことを議論した後, 漸近展開を数学的に正当化する厳密 WKB 解析へ(発散級数の解析学). 2015/07/02
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2
きちんと式を全部追ったわけではないけれど、プランク定数0の極限が非常にやっかいな問題を引き起こすことについて、漸近展開の意味と使い方を交えて分かりやすく解説してくれる良い本。古典も量子もどちらも大成功と言っていいほど上手くいっている理論なのに、両者の間の橋渡しがいまだに完全に解決していないこと、その理由などが丁寧に述べられている。面白い。2012/11/11