内容説明
行きがけに手紙をポストに投函しようと思っていたのに、すっかり忘れていた―こんな経験は誰にでもあるだろう。なぜ人はそのような失敗をするのか。裏を返せば、時折の失敗を除いた多くの場合に「しようと思っていたこと」を「タイミングよく」思い出せるのはどうしてか。日常的な記憶経験を出発点に、心理学と脳科学の成果から、そのメカニズムを探る。
目次
1 いろいろなうっかりミス(し忘れ―「あっ、忘れてた!」;し間違い―「あっ、しまった!」 ほか)
2 「し忘れ」とは何か(展望記憶;人間関係にとって大切な記憶 ほか)
3 「し忘れ」を実験的に再現する(失敗の分析の難しさ;並列型課題 ほか)
4 「し忘れ」を生み出す脳(認知神経科学によるアプローチ;記憶の障害―健忘症と認知症 ほか)
5 「し忘れ」を防ぐ(自らを知る―セルフモニタリングの重要性;実行の時刻を特定する ほか)
著者等紹介
梅田聡[ウメダサトシ]
1968年千葉県生まれ。1998年慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。博士(心理学)。慶應義塾大学文学部心理学専攻准教授。主な研究分野は、認知神経科学。記憶の神経メカニズムについての研究を進めるとともに、情動や社会性の実現に「脳・心・身体」がどのように関与しているかを探っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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calaf
10
未来にやるべきことを、ついうっかりとし忘れてしまう...やるべき時間を想起する成績は若者も壮年者も変わらないものの、内容を想起する成績には違いが見られるらしい...さらに、健忘症の人は時間の想起には成功するものの内容想起には失敗、認知症の患者は時間の想起も内容想起も失敗することが多くなるらしい...2013/01/10
那由田 忠
4
未来の意図を記憶し、適切な時点で何かやらねばと気づき、やるべきことを行うという流れをきちんとできるか。それが抜けるのが、「あっ、忘れてた」である。 この三段階が脳の中で前頭葉で扱われるものの、機能が分けられていることが、いろいろな脳の部署が壊れている患者を調べることで証明される。健常者は当たり前のように全てが統合されている。 壮年者が人間関係の中でこうした一連の動きをスキル化しているので、一般的記憶力が低下しても、様々なノウハウによって補って若者よりもうまく立ち回れるというのが面白い。2014/09/30
還暦院erk
2
図書館本。ページ数少ない割に情報量多し。ど忘れも「し忘れ」も多いわたしは、梅田先生のおっしゃる通り環境整備と意識化で対応していきたいぞ。ところで、健忘症の「健」の字義は「よく・しばしば」だって(これはわたしが漢和辞典で調べた)。健やかに忘れるってわけじゃあないんだね(笑)。2015/01/25
ダンスにホン!ころりん
2
20070706第1刷発行 131107読了 肝心なのは思い出すタイミング2013/11/07
hoshineko
1
心理学と脳科学から読み解く「し忘れ」と「ど忘れ」のメカニズムの説明である。並列型課題における失敗要因の分析は面白かったが、結局、どうしたら防げるかの説明は、期待できない。 セルフモニタリング、実行時刻を特定、意図として認識、環境整備をするしかないのだが、防ごうとする人はすでにやっていることかと思う。2023/02/12
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- 和書
- 映画は頭を解放する