内容説明
描かれた奇怪な「河童」の国は、戯画化された昭和初期の日本社会そのものであり、また生活の上からも創作の上からも追いつめられていた作者(一八九二‐一九二七)の不安と苦悩が色濃く影を落としている。この作品を書き上げた五ヵ月後、芥川は自ら命を絶った。同じく最晩年の作「蜃気楼」「三つの窓」を併収。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっぴー
60
『河童』河童界を通して人間界を批判するとは、器用なんだか不器用なんだか・・・ユーモラスだからこそ余計世の中への絶望と諦めが感じられます。芥川先生の泣き笑いする声が聞こえてきそうな作品でした。『蜃気楼』は解説によると先生の自信作だそうですが、短すぎて理解出来ませんでした。『三つの窓』は分かるような分からないような。三篇全て死を間近にした先生の作品だそうです。興味のある方は是非ご一読ください。2016/06/18
Koichiro Minematsu
38
芥川竜(龍)之介が描いたという河童の絵の紹介がテレビであった。「何で河童?」と思い、そこで図書館で借りました。晩年の作品であり、カッパという存在しない世界に昭和初期の人間世界を透して、己を見つめている。芥川の作家としての苦悩と、精神的病に苦しみ、当時の世に限界を悟ったと思う。そう思えてならない。それで、自ら命を経つことに。2019/07/29
そんれい
9
「どうかkappaと発音してください」から始まる芥川龍之介が自殺する年に書いた物語。生活教(食えよ、交合せよ、旺盛に生きよ)を信じて生きている河童たちが、だんだん狂っていく。芥川龍之介の苦悩がにじみ出ているかのような、重い物語だ。2020/06/21
のほほん
3
芥川龍之介が自殺する少し前に書いた作品です。「蜃気楼」は蜃気楼を海岸に見に行ったことを書いた静かな作品です。しかし、解説を読むとその作品の中にも、自殺を考える芥川龍之介がいました。「発狂するかもしれない」という恐怖から逃れるには自殺するしかなかったのでしょうか。2016/03/11
ともゑ
3
芥川龍之介が自殺した動機のぼんやりとした不安を作品から読みとれるかと思って読んでみた。そんな先入観のせいかもしれないがどの作品も病んでる気がした。「河童」は社会風刺も効いてユーモラスな短編ではあるものの深読みすると現世への絶望感あるし「蜃気楼」は夢の中の何気無い場面を文章でスケッチしたような雰囲気が良いのだけれどなんだかよくわからないし最後の「三つの窓」の悲壮感は何とも言えない。全体的に不安が漂ってる。でも考え過ぎかもしれないので芥川の初期の作品から読んでみたくなった。2015/12/26
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