出版社内容情報
アイヌ民族の口承文学を初めて文字化した作品。アイヌの一少女が口伝てに謡い継がれてきたユーカラの中から神謡13篇を選び、その音をローマ字で起こしたものに平易で洗練された日本語訳を付す。
(解説:金田一京助、知里真志保)
内容説明
「銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに」―詩才を惜しまれながらわずか一九歳で世を去った知里幸惠。このアイヌの一少女が、アイヌ民族のあいだで口伝えに謡い継がれてきたユーカラの中から神謡一三篇を選び、ローマ字で音を起し、それに平易で洗練された日本語訳を付して編んだのが本書である。
目次
梟の神の自ら歌った謡「銀の滴降る降るまわりに」
狐が自ら歌った謡「トワトワト」
狐が自ら歌った謡「ハイクンテレケ ハイコシテムトリ」
兎が自ら歌った謡「サンパヤ テレケ」
谷地の魔神が自ら歌った謡「ハリツ クンナ」
小狼の神が自ら歌った謡「ホテナオ」
梟の神が自ら歌った謡「コンクワ」
海の神が自ら歌った謡「アトイカ トマトマキ クントテアシ フム フム!」
蛙が自らを歌った謡「トーロロ ハンロク ハンロク!」
小オキキリムイが自ら歌った謡「クツニサ クトンクトン」〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
77
アイヌの伝承を知る貴重な資料である。 シマフクロウ神が自らをうたった謡「銀の滴降る降るまはりに」が有名。 ローマ字の音表記と日本語訳がついている。 金田一京助の後書きと、著者の実弟の解説がついている。 この2つを読むと、本文の価値を再確認することができる。2012/03/01
杏
6
序文もまるでうたを聞いているように美しく、心揺さぶられた。自然とともに生きたかつての幸せな生活から現在の悲惨な状況までがありありと目に浮かんでくるようだった。「おお亡びゆくもの・・・・・・それは今の私たちの名、なんという悲しい名前を私たちは持っているのでしょう。」志半ばで夭折してしまった知里幸惠さんの伝えたかったアイヌの文化や精神を享受できたことが幸せ。厳しい自然からの恵みと感謝、教訓や英雄譚などをうたうことで伝えてきた長い長い歴史を考えるとくらくらしてくる。2014/06/08
Kuma
5
昨年ウポポイに行ってアイヌのこともっと知りたくて読みたい本に登録していた。折返がないとアイヌ神謡ではないと!自然と共にあった文化だと感じた。2024/04/10
pandakopanda
5
図書館本。アイヌ民族の間で口伝えに謡い継がれてきたユーカラのうちの神謡13篇。狐が自ら歌った謡「トワトワト」、繰り返し出てくるトワトワトがリズミカルで好き。2019/07/14
pepe
4
アイヌに伝わるユーカラのなかでも、動物や海などの神を主人公とした伝説。 知里真志保氏の解説によれば、カムイユカルと呼ばれるらしい。読んでいて面白いのは、神も判断を誤り、死んでしまうことである。そのあやまちが、ちょっとしたいたずら心であったり、感情的なものに由来するのもユニークである。アイヌに酒を献上されるシーン(海の神の話)などは、神の側からの儀礼への目線であり、アイヌと万物に宿る神の関係の深さをみる。2013/03/24