出版社内容情報
永井荷風(1879-1959)は,38歳から79歳の死の直前まで,42年間にわたって日記を書きつづけた.「断腸亭」は荷風の別号,「日乗」は日記のこと.その全文からエッセンスを抄出して読みやすい形で提供する.
内容説明
読む者を捕えてはなさぬ荷風日記の魅力を「あとを引く」面白さとでもいおうか。そういう日記の、ではどのあたりが最も精彩に富むかといえば、その1つとして戦中の記事をあげねばなるまい。なかでも昭和20年3月10日の東京大空襲にはじまる5カ月間の罹災記事は圧巻である。昭和12‐34年を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
5
昭和12-34年の戦前から戦後までを網羅。相変わらずの健脚ぶりを発揮しながら、連日遅くまで歩き回っては人と話をし、あちらのほうも怠りなく、意外に街の噂話を拾い集めてもいます。次第に戦争に突入していく当時の空気が伝わってきます。空襲による偏奇館炎上、疎開、そして終の棲家の市川へと生活の場所が変遷しても、ぶれることなく好きなことを貫き通したことは並大抵の偏屈ではできないことですね。こうなると、摘録で終わらず全集の日記に進まざるを得ない気がしてきました。2018/08/22
yasu7777
3
★★★☆☆ 稲沢3308-362022/01/16
伊勢田和良
0
井荷風「断腸亭日乗 上下」を読みました。 38歳(大正6年)から79歳(昭和34年)の死の直前まで42年間の日記です。 ワイド版岩波文庫で900ページのボリュームです。 空襲、疎開の際にも肌身離さず持ち歩き、大切にしていました。 荷風の代表作で、その人となりと時代を知る上で貴重な資料です。 資産家の息子で若くして利子生活者となり、文壇での成功で金銭的に恵まれていました。 江戸趣味や花柳界での遊蕩、妾・愛人を囲って酒色と文芸に浸った生涯でした。 そのため家庭を持つのを嫌い、親戚づきあいもありません。 2014/07/07