出版社内容情報
近代の秩序をゆるがした無限小。カトリックや絶対君主に抗し数学の基礎を築いた批判精神の勝利を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yooou
7
☆☆☆☆☆ 予想もしない展開に息をのんだ!無限小の概念は、政治、宗教、自然科学を飲み込み、ヨーロッパの近代史を形作る重要な役割を果たしていた。なんと、なんと。2016/06/18
鏡裕之
6
かつて数学が弾圧されていた時代があった。「この数学はOK」「この数学は教えてはならぬ!」と線引きがなされていた時代があった。その線引きの境界線が、無限小の考え方――解析学の基礎――である。「この世は神のつくったもの、したがって秩序と調和のある世界。幾何学はそれを体現している」と考えて幾何学を推薦し、無限小の考えを弾圧しようとしたイエズス会と、無限小を擁護して広めようとした数学者たちとのバトルが、非常に熱い。果たしてバトルの行く末は……? 数学史のお話でありながら、文系の自分でも大変楽しく読むことができた。2016/02/25
Amano Ryota
4
「宇宙の創造の核心には、どんなに厳密な論理を組み立ててもすり抜けてしまい、世界が最前の数学的演繹からも外れてしまって、我が道を行ってしまうような謎がある、ように見える。そして、どこに行くのかわれわれにはわからないのである。」この世界の核心を根底から揺り動かそうとしたのが、数学の無限小という概念だった。争われたのは、数学という学問の解釈ではなく、世界の在り方を巡る各々の学者の信念だったのだろう。この世界と学問の密接な繋がりというのが、ぼくには想像できないけれど、文字通り人生を賭けた戦いは真に迫るものがある。2016/08/20
MrO
3
最終的には、ホッブスとウォリスとの無限小の受容をめぐる論争に帰着されるが、数学観をめぐる、今でも争われる二つの立場の、壮大な物語である。辻褄があえばいいじゃんという急進派のあとに、それを体系の中に組み込む理知的な保守派がいて、数学は発展してきた最初の物語だ。しかし、それが、イタリアの停滞とイギリスの発展をもたらすとは、数学の力は恐ろしい。知的に興奮できる一冊。2015/09/23
shibacho
2
かつては学問は神学を頂点としたヒエラルキーがあった(神学>哲学>数学)のですが、ユリウス暦からグレゴリオ暦への改暦の成功によって数学の地位が上がったというのが興味深かったです。無限小がなぜ危険思想とされたのか、ってのはキリスト教的価値観から幾何学こそが数学の王道とされていて云々とは書いてあったのですが、自分の読解力のなさもあり、正直あんまり腑に落ちませんでした。カトリックとプロテスタントが対立する時代においては重要だったんでしょうが…数学が中世ヨーロッパでどう思われていたのか知る意味では面白い本です。2018/08/07