出版社内容情報
臓器移植の最大の問題は,臓器不足だ.動物の臓器・細胞を用いる異種移植が実現すれば,臓器の不足は解消されるだろう.新局面をひらく医療の可能性と現実を,研究の中心にいる著者が丁寧かつ詳細にレポートする.
内容説明
移植を待つ人の苦しみは計り知れない。移植までの時間はときに数年に及び、間に合わず助からないこともある。臓器移植はこれまで多くの人の命を救ってきたが、救いきれない人の数はあまりにも多い。問題は提供される臓器が不足していることなのだ。本書では、臓器不足を抜本的に解決する技術として、動物の臓器・細胞を人へ移す「異種移植」を解説する。拒絶反応を回避する方策はあるのか?危険性は?医療経済への影響は?倫理的な問題はどう考えるのか?21世紀の医学革命となるであろう異種移植を、多面的に、そして丁寧に紹介する。この医療は、拒絶という免疫系の働きを解き明かす、基礎医学の大きな挑戦でもある。
目次
夜間勤務制度の終わり―臓器移植の今日と明日
動物の魅力―臓器移植の世界での需要と供給
イカロスから最初の心臓移植まで―種のギャップを埋めようとした人間の初期の試み
動物はみな平等、しかしあるものたちはほかよりも近しい―ドナーの選択
免疫寛容ゼロ―動物の臓器の拒絶
スプーン一杯の砂糖―拒絶の阻止
「ヒト化」されたブタ―ドナーの遺伝子の操作
免疫学の聖杯を求めて―免疫学的寛容
糖尿病からアルツハイマー病まで―ちがうのは細胞
異種移植の不協和音―移植された臓器は働くだろうか?
最高度の危険区域―エイズのような流行のおそれ
モルモット―最初の患者の選択
動物にとっての権利/正義と人の不正―倫理的考察
公衆の保護―政府の規則と安全対策
審判の日―考えられる法的問題
究極の子ブタ銀行―動物臓器の移植と保健経済
課題を伴う未来像
著者等紹介
クーパー,デイヴィッド・K.C.[クーパー,デイヴィッドK.C.][Cooper,David K.C.]
マサチューセッツ総合病院・移植生物学研究センターの移植免疫学者。ハーバード大学医学部外科の助教授。国際異種移植学会会長
ランザ,ロバート・P.[ランザ,ロバートP.][Lanza,Robert P.]
アドヴァンスト・セルテクノロジー社の医科学開発(組織工学・移植医療)部門の副所長
山内一也[ヤマノウチカズヤ]
1931年生まれ。日本生物科学研究所理事。東京大学名誉教授
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