感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱせり
12
深く豊かな森が、恐ろしいものに押されてどんどん狭く閉ざされていくのを感じていた。狩られる野うさぎは、人。寓話のようであり、ホラーのような悪夢。この悪夢は、人間が人間のために作り出したもの。それが一番気味悪くて心底おそろしい事だとの再確認。これに似た事・もっと酷い事が嘗て起こったし、この先も？ まだ悪夢の続きの中にいる。2016/03/28
くさてる
11
広大な森林地帯を舞台に描かれる、少年たちの生きる為の闘い。収容所に送られる運命から逃れようとしながら、狩りで得た獲物をナチスの司令官に捧げる少年は、生き別れの弟を囚人の中に見つける。とにかく厳しく研ぎ澄まされた雰囲気のなかで語られるこの物語には、救いになるような甘さが無く、代わりに感じるのは身を切るような川の水の冷たさ、飢餓、痛みだけ。その苦しさや冷徹さが、そのまま自然自体の残酷さとシンクロしているようで圧倒されました。辛いですが、読み応え有ります。2016/01/06
ぶちょー
2
かわいいタイトルだけど、美しく残酷な弱肉強食の森の動物たちの躍動感ある描写に始まり、森の植物や動物の様子が写実的に描かれている。同時にナチスドイツのホロコーストが同じ森のなかで繰り広げられ、ふたりの少年の生涯は野うさぎのように生命力に溢れ、野うさぎのようにあっという間に終わる。 同じように美しく、同じく残酷で、同じ場所で生きる生命に何の違いがあるのか。表現手法が独特で一度で理解するのは難しい。この手の話はよくあるのかもしれないがこの手法で、この表現で描くことで、この作品は唯一無二になったように思う。2015/12/15
