出版社内容情報
いま文学入門とは何か.そして「触れると手が切れてしまうような」この名著をどう読むか.フェミニズムなど現在の諸動向も広い視野の下に収めて,「文学」そのものを,また「文学」にかかわる諸問題を細心かつ大胆に論じる.
内容説明
「触れると手が切れてしまうような」名著を『文学部唯野教授』のモデルと目されたこの訳者はどう読むか。フェミニズム・ジェンダー批評など、この訳書刊行後十年の動向をも広い視野の下に収め、いま文学にかかわる諸問題を切り出して、細心かつ大胆に論じる。その論のはしばしに、ユーモア溢れる名講義。
目次
第1講 メニッポス的風刺の誘惑
第2講 閉ざされた窓
第3講 文学の誕生、作者の誕生
第4講 読者の運命
第5講 ありえない遭遇
第6講 中心と周辺の消滅
第7講 無意識の発見
第8講 主体の分裂、他者への語りかけ
第9講 フェミニズムからの呼びかけ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
梶
30
文学の歴史はテクストだけでなく、活版印刷技術によって成立し、まだ日は浅いのに、たくさんの文学に向き合おうというスタンス(文学理論)があることには何か新鮮な思いがした。みずからの納得のいく形で文学を見出そうとするのは自然なことであるようにも、難しいことのようにも思える。 本書は、ロシアフォルマリズムから脱構築へ、そしてフェミニズム、同性愛の問題まで広く取り扱っている、示唆に富む一冊である。2020/09/18
3247
6
筒井康隆『文学部唯野教授』を入り口にして文学理論をわかりやすく概説している。前半部はクラシカルな批評理論が詳らかに。後半、脱構築の章から精神分析(ラカンの理論は素人には晦渋だった)、フェミニズム・ジェンダー批評に至って、本書の意図が躍如としてくる。理論によって認識されていなかったこと、見えなかったものが現前化してくる。そして理論と理論の関係自体もそういった様相のなかにあるのだと。理論自体に良し悪しはあっても、理論それぞれの優劣はなく、理論は様々なものを取り込みながらアップデートしていくものなのだと思った。2013/05/17
しんえい
5
再読。文学はその時代における政治的イデオロギーから自由たりえない。ニュークリティシズムはマルクス主義に対する危機意識から、作者と作品の切り離しを行った。イデオロギーからの解放を目指すべきである受容理論は、むしろイデオロギーをもつ読者を排除した。イデオロギー的国家装置としての文学や教育は、自己肯定感と自己有用感の高い奴隷を産むための装置として機能した。2019/09/08
🐰
5
第一講と精神分析あたりは難解でよくわからない……。たぶん半分くらいしか理解できてないけどそれでも面白かった。2017/11/10
Iko
4
イーグルトンの取扱い説明書として「ここはこういう意味でね」と教えてくれる本ではなかった。むしろイーグルトンを意識しながらも、あえて別の切り口で語れないかと苦心する、研究者の挑戦の本だと思う。そうなると同じことを語っているようでも手触りが違ってくるもので、「読みやすく理解できた」ように一旦思えたイーグルトンのテクストが再び分解していくようにも思える。なるほどポスト構造主義の世界に生きる限り、「解説書」の「解説」なんていう単純化のプロセスを真っ向からやるのは、野暮なことなのかもしれない。2015/07/30
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