出版社内容情報
血ぬられた殺人現場,ショッキングな写真,スキャンダラスなのぞき――現代のフォト・ジャーナリズムの役割はこれでいいのか.被写体とのコミュニケートなしに写真は撮れないと,世界各地を撮り続けている筆者が訴かける.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
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2016年783冊め。マスコミにつけられた「女流写真家」の名を嫌い、日本で最初に「フォト・ジャーナリスト」を名乗った著者。留学時代のNY ハーレムでの写真とコミュニケーションの話、戦争とフォト・ジャーナリズム、写真週刊誌とフォト・ジャーナリスズムを語る。陥落間近のサイゴンで、戦火を逃れる赤ん坊を抱いた女性を「撮れなかった」悔恨と、「撮れなくて」よかったという思いに職業人と人間としての在り方を考えさせられる。2016/10/02
nutts
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60ページの小冊子。飾り気ない文章。「人を撮る」覚悟とは何なのか、70年代から駆け抜けてきたフォト・ジャーナリストとしての矜持がビシビシ伝わってくる。「戦場で逃げ惑う被写体を前に、シャッターを切るか、手を差し伸べるか」という一番重い命題を巻頭から語るのに驚いた。「反戦の願いを込めた一枚も、大きなメディアの枠組みでは、全く違った意図で利用されかねない危険がある」と時には冷静に、一歩引いた眼で周りを俯瞰する。正論を吹くのは容易でも、貫き通しきるだけのまっすぐさと強さはなかなか持ちえない。こんな大人でありたい。2011/03/04