出版社内容情報
日本は異民族を支配するためにいかなる「同化」政策を行い,異文化の逆流を防ぐためにいかなる差別装置を築いたのか? 台湾・朝鮮・「満洲国」・中国での教育・言語政策と皇民化の実態を手がかりに,文化支配の構想と自壊を跡づける.
内容説明
近代日本は、異民族を支配し多民族統合の体裁を整えるために、どのような文化政策を行ったのか。また、異文化の本国への逆流を防ぎ「日本人」であることの同一性を維持するために、いかなる排除のための装置を機能させたのか。台湾・朝鮮・「満洲国」・中国(華北占領地)での教育・言語政策と宗教・思想統制の実態を、現地の同時代資料をふまえ、歴史状況の推移を追いながら明らかにする。日本型文化統合の構想と自壊のプロセスを入念にトレースした労作。
目次
第1章 台湾・1900年前後―中華帝国からの離脱
第2章 朝鮮・1900―10年代―弱肉強食と博愛平等
第3章 台湾・1910年代―差別の重層的な構造
第4章 朝鮮・1920―30年代―多民族国家体制の模索
第5章 満洲国―アジア主義の可能性と限界
第6章 華北占領地―日本語共栄圏構想の崩壊過程
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とんこつ
5
論文資料として使うため、第六章の「華北占領地」のみ読了。ただこの一章を読むだけでも、本書のもつ重厚さがひしひしと伝わってくる。大東亜共栄などの美辞麗句に支えられた日本の帝国主義にはある重大な逆説が宿ると筆者は指摘する。それは、天皇を中心とした同心円のなかで皆が同一な存在であるはずの帝国日本のナショナリズムだが、異民族支配による拡大のなかで、支配と被支配という非同一・不平等な関係性を顕現させてしまう、ということである。華北占領地における日本の文化・教育政策にも、もちろんそのことが顕著に現れている。2019/11/05