出版社内容情報
世界経済の混乱に対する,各国政府の政策とその効果に見られるように,グローバル経済における国家の権威は明らかに衰退している.本書はその原因と,国際官僚機構・国際監査法人・超国家企業などの新しい権威の台頭を分析する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takashi1982
1
本書の原著での公刊は1996年である。しかし、その当時にあってストレンジの認識は既に現在の社会を見通しているかのようである。いまでこそ、本書で述べられているいくつかの点は「当然だ」と見なされているが、それを当時において指摘する先見の明は非常に卓越していると言わざるを得ない。 「国家の退場」という刺激的な本書のタイトルとは裏腹に、そこで指摘されているのは「国家の絶対性の揺らぎ」であろう。つまり、近代国民国家の絶対性が、近年揺らいできている。その原因には市場の力や超国家機構の存在がある、ということである。2007/05/31
飯田健雄
0
The Retreat of Stateが英語のタイトルである。国家が消滅するわけではない。21世紀の前半の国家は、グローバル金融資本主義(暴走する資本主義)を踏み台にして、国家像の再定義を試みようとしている。その点で、スーザン・ストレインジのこの著作は我々に問題をつきつけている。
Sanchai
0
再読。経済活動や金融のグローバル化を中心に描いているので、国境をまたがる環境問題とか、国際犯罪ネットワーク(人身売買、海賊等等)、パンデミックとか、国をまたがる課題に対して「国家」の枠組みだけでは対処できないという論点はあまりカバーされていない。2012/02/20