出版社内容情報
ロビンソン・クルーソーの物語をフライデーの側から読みかえ,未開と文明,自然と文化,狂気と理性の対立と倒錯を寓話的に描く.著者の深い理解者であるG.ドゥルーズによる解説を加えた,待望の新装版.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
30
誰もが知っているロビンソン・クルーソー物語の語り直し。他者のいない世界(無人島)で、彼の認識がどのような変容を蒙るのか、哲学的に考察する。脱出を諦めた彼は、絶望と無気力に陥りながら、文明(灌漑、栽培、牧畜、法、信仰)を打ち立てる。やがて混血のインディオ=フライデーが加わり、奴隷か家来のように扱われるのだが、彼は徐々に「文明」を蝕んでゆく。異人であるフライデーは、もはや他者として機能しないのである。むしろ、双子の片割れ、分身のように現れる。数十年の時を経て、救出の船が訪れたとき、二人の出した答えは?2019/08/11
長谷川透
15
大人に向けた『ロビンソン・クルーソー』。主人公は勿論、彼への試練もデフォーのそれと同じであるが、トゥルニエの場合は、絶えず思索の機会を与え、考える故に彼を徹底的に孤独に追いこむ。しかし、島でたった一人の彼を新世界の創造者とも呼べる。自ら規律を作り、生活の基盤を固め、孤高の王国の主となるのだ。舞台の島は、孤高の冥界にも、楽園にも成り得るのだ。ところが後半の島の原住民フライデーの登場は、彼にまた新たな価値観を見せつけることになる。この原住民が『白鯨』のクイークェグに心なしか似ているような気がするのは俺だけか。2013/12/28
T. Tokunaga
3
いちばんイギリスから遠く離れた英国小説(著者はフランス人)。ロビンソンがヨークの大学に在籍経験があったり(舞台の18世紀には、ヨークには大学はない)、ヤード・ポンド原器が登場したり、英国小説としては不思議なところが多いが、この小説から感じたのは、当時のイギリス人のグラマースクール以上卒業者は、ラテン古典をたくさん読まされ、人格の根幹にされたのだが、この小説にはその気配がしないことである。2023/08/26
takeakisky
1
人間が独りであること、秩序を打ち立てること、それを維持すること。自然=島≒女性との抜き差しならない関係。突き詰めるうちに綻びもでき、真面目な取り組みとは裏腹なちぐはぐな結果。可笑しくも哀しくグロテスク。続いてフライデーを得て、この状況に他者への考察が加わる。これらそれぞれとそれぞれとの関係をあらためて発明していく過程はスリリングですらある。そしてカタストロフ。18世紀的な道具立てを用いて20世紀的なアプローチを取るとこうなるという試み。おおらかすぎるロビンソンへのアンチテーゼ。読むのには骨が折れた。2023/01/30
Mark.jr
1
ロビンソン・クルーソーの皮を被った哲学小説2017/09/25
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