出版社内容情報
現代アメリカの中間階級は,消費が増すほどいっそう不満を強め,貧しく感じるようになっているという.どうすれば消費主義を克服できるか.より少ない,より豊かな生活とは? 驚くばかりに日本と酷似する状況の生々しいレポート.
内容説明
中流階級のアメリカ人は、まるで明日はないかのように消費している。にもかかわらず、消費が増えるほどますます満たされない思いが強まる。現代社会では、商品はある種のコミュニケーションの手段であり、人びとは何を持ち、何を身につけているかで自己のアイデンティティと社会的ステータスを表現しようとする。なぜアメリカ社会にここまで消費主義が浸透してきたのか。どうすれば「働きすぎと浪費の悪循環」から抜け出すことができるのか。実例を豊富に紹介しながら具体的に提案する。
目次
第1章 新しい消費主義の出現
第2章 商品によるコミュニケーション―私たちが買うものはいかにして多くを語るのか
第3章 視覚的なライフスタイル―アメリカのステータスシンボル
第4章 消費があなたらしさを創る
第5章 隣のダウンシフター
第6章 ディドロの教訓に学ぶ―欲望の上昇を止める
エピローグ 消費を減らせば経済は難破するか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
29
アジア通貨危機翌年の1998年初出。過剰消費の時代もあったが、その後、リーマンショックがあったように、サブプライムローンで家を失うことになろうとは、出版当時、10年後まで想像していた人はどれだけいたろうか? 冒頭、そんな疑問が湧いた。揺り戻しが必ず来るのである。競争的消費で、消費増えるが貧しく感じる矛盾(20頁~)。ただ、世論調査では、良い生活を達成する非常に良い機会に恵まれているとするアメリカ人は91年までの間に減っていた(27頁)。ブルデューの文化資本(48頁~)。 ハビトゥスとは習慣的状況。 2014/11/03
アナクマ
26
98年の著作。「贅沢熱」の原因(高学歴女性の社会進出。マスメディア。所得と資産の集中)を探り、さらにダウンシフト傾向の発出をルポする。競争的見せびらかし消費の社会学、あるいは、脱過消費社会への序章録とも言えそう。◉時代背景は経済拡大・資産価値上昇・失業率低下といった時期にあり、なおかつどちらかと言えば裕福な消費者にフォーカスしているため、格差問題との絡みはやや不満。誰しも小金があるときは基本のんきだし、当然のこと無い袖は振れないのだけれど、色々と「ブレーキがかかり始めている」さまは記録されています→2021/11/21
akira
25
まちライブラリー府立大本。 興味深い一冊だった。どこまでも続く浪費の構造を社会と人間それぞれに焦点を当てて分析していく。基本的に浪費は他者との関係で成立する。 興味深い一節。人は何に影響されてモノを買うのか。テレビ視聴時間と浪費についてのデータの相関関係はなかなか恐ろしい。コマーシャル、番組、その中に盛り込まれた言葉。いつのまにか自分の基準線は変化させられている。 「メディアは上流階級のライフスタイルが普通で当たり前のものであり、私たち全員がそうしなければいけないように描き出そうとしている」 2019/11/14
スパイク
11
よかった、人生の参考書!これからの生き方について、ひとつのお手本が示されている。初版が1998年と古く、アメリカ消費経済について書かれたものではあるが、現在の日本でも充分通用する考え。私としては、消費経済も、もう少し楽しみたいし、急速なシフトダウン(消費の減速)はエンジン(精神)に負荷をかけると思う。また、いま所属する社会(準拠集団)がそのような生き方を認めないだろうから受容してくれる準拠集団を見つけるかつくり出さなくてはいけないので、今すぐってわけにはいきませんが、最終的には、目指すところではあります。2014/06/08
カモメ
6
新しい消費主義は中流階級の間で社会的ステータスの為の消費を促し、「浪費」に繋がることとなる。見て欲しくなり借りて買う、という連鎖がアメリカ人の支出パターンだと筆者は指摘する。そして私的消費への圧力が増大するにつれ、公共財の土台が蝕まれるようになる。商品は人間関係上の態度に影響を与え、消費は社会的差異の反映と言える。消費することが非常に多くの意味を持つ文化のもとでは金がないことは深刻な社会的障害となり、万引き行為も増加した。2024/05/25