出版社内容情報
1917年,歴史は動き始めた.並みいる政敵を退けながら,強烈な自負を基に革命を断行する最高指導者レーニン.やがてその死に際しては数々の遺稿が封印され,ひとりの政治家が国家イデオロギーの象徴へと聖化されていく.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
飯田健雄
43
この本は面白かった。やはり、ソ連崩壊後の新資料に依拠しているからであろう。読了後、なにか寂しい気持ちになる。このレーニンという本で、精神的な意味でひとつの青春が終わった感じかも。イデオロギー論争や政治的闘争を一つ抜け出している意味で秀逸な労作である。2019/05/04
34
14
ちょうど昨日の夜(10月25日)、レーニンが革命宣言をした日の記述を読んでいるときに、今年がロシア革命百周年の年であるということに気がつく。2017/10/26
てれまこし
6
18世紀啓蒙主義の後継者であり、ヨーロッパ近代主義者でもあったレーニンは、近代の理想を裏切るような全体主義国家の土台を築いた。彼の鋼のような意志を支えたのは、科学によって保証された未来への道のりを自分だけは知っているという自負であった。共産主義社会はキリスト再臨の約束の現代版として機能した。そうして歴史哲学が宗教的情熱を煽り、過渡期のおける没道徳性にイエズス会的道徳的根拠を与える。マルクス主義の危険性は唯物論ではなく、今を生きる人たちから未来という「抜け道」まで奪う疑似科学性の方にこそあったんではないか。2019/05/02
ポルターガイスト
1
驚くほどの欺瞞性,人間理解の薄っぺらさ,自分の考えへの固執,いやらしいまでの権力志向,人間嫌いのくせに熱量だけは豊富にあって不毛な事業に人生のすべてを費やす男。レーニンがとにかく嫌いになる。けどそれは自分が性格的にはレーニンに似ているからかなと思う。こういう人は日本のコミンテルン系知識人にもたくさんいる。文体は硬く読みにくい。党内の権力闘争が内容の多くを占めていて想像もしにくい。レーニンの負の面が目立つ記述ですが,右派が昔から主張しているような一面的な悪人レーニン像にはなっていないところが本書の特色か。2017/09/23
Mt. G
0
『国家と革命』の執筆。「社会の下層の人々が行政を自ら運営するのに慣れてくると、資本主義の拘束から解放された経済は、人民の一般的、客観的必要に利益をもたらすような部門で拡大していくであろう。……国家の存在理由は、支配階級が他の諸階級を支配しようとして自らの階級的利益に有利なように強制力を行使する点にあることを、レーニンは強調する。……それでもマルクス主義の究極の目的は常に抑圧と搾取のない社会を実現することにあったことを、レーニンは力説した。その社会は、まさしく歴史的発展の最後の段階である。」p64-652018/01/29