出版社内容情報
2.26事件前後の激動期,深い愛にむすばれ自立をめざして青春を生きた2人の女性の魂の交流を描く.児童文学にうちこみながら,心の底に暖めつづけた著者生涯のテーマを,8年かけて書き下ろした渾身の長編1600枚.
内容説明
満州事変から太平洋戦争へとすすむ激動期に、深い愛に結ばれて青春を生きた明子と蕗子。蕗子の病はすすみ、帰らぬ人となった。そして、半世紀をへて、蕗子の大切な記憶をまもる明子のまえに、驚くべき事実が明かされる。八年の歳月をかけて書き下ろしたライフワークの完結篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
11
上巻を読み終わってすぐ下巻を借りてきて、2日で読み終えた。第2部が非常に緊迫感があって、引き込まれると同時に読み疲れた感じをもった。それに比べて第3部は、戦後50年ごろに一気に移り、少し安心しながら読めた。それにしても、タイトルの「幻」とは何を意味するのか・・・。読んでいる間も、読み終わってからも、ずっと引っかかっている。おそらく、いろいろな意味が(明子にとっても、蕗子にとっても、他の登場人物にとっても)込められているのだろう。作者石井桃子さんの壮大な生涯の一端を見たように思う。読んでよかった。2016/12/06
iaraumi
3
戦前の二人の元女学生の友情がどうなったか。後編。あの辛い大変な戦争をどう乗り越えるのか、という流れになると思ったのに違った。明子の蕗子への愛情が、慕情が、失いたくないという気持ちがすごく伝わってくる。戦前の女学生なんて「なんでも禁止されていて、制限ばかりで大変なことばかりで、今の私たちとは何もかも違うかわいそうな時代を送っていたんだ」というのがただの思い込みだということに驚く。もちろん不便なことばかりだし、結核は治らないのだけれども。大切な思い出を分けてくれて、石井さんありがとう。と思う。読めてよかった。2016/10/23
jun-ko
3
その存在が、人生を彩り、深めてくれる。出会わなかった人生など考えられないような。明子と蕗子、二人の女性の友情の物語。2014/01/22
ぱせり
3
献身的な明子、享受するだけの蕗子、のように感じたわたしでしたが、そうではなかったのですね。一生に渡って明子の人生を輝かせ、心に美しい灯をともしてきたのは、実は夭逝した蕗子のほうだったのですね。タイトルの「幻の朱い実」は、明子にとっての蕗子でした。2008/06/08
nanami sakai
2
児童文学翻訳家の石井桃子さんの自伝的小説。戦前20代だった頃の数年間の1人の女性との特別な時間。見事に生き生きとその濃密な時間が描かれていて、思わずのめり込んだ。蕗子という女性のまた魅力的なこと。2人が交わした数々の書簡はいつか終わりが来ることをわかっていながらユーモアに溢れ、輝く今をしっかりと握りしめて貪欲さすら感じられるほど。生きるということ、人と交流するってこういうことだと強く思った。素晴らしかった。2018/04/09