出版社内容情報
児童文学はりっぱな価値をもつ文学であるとの確信から,良い本を子どもに選んで与えることの重要性を説き,各ジャンルの古典的作品を精密に分析し,評価基準を明らかにする.児童文学研究のバイブルといわれる名著.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
april-cat
10
西洋中心の児童文学論なのかな。昔話について「すべての民族が文学創造の天分をもっているのではない」というのだけど、勝手に差別的な気がして、時代遅れに感じる部分もありました。ただし、全般としては児童文学に対して大変優れた考察がなされていると思います。ぜひ何度も読み返してこのストイックな態度と価値観を自分のものとしたいものです。2013/06/12
吟遊
9
最近、「岩波現代文庫」に入った。児童文学の翻訳者としてすぐれた3人が一致して推したという(1963年刊)。その頃の日本の児童文学の薄弱さを、あとがきで嘆いてもいる。リリアン女史はカナダに生まれ、トロントの図書館員として児童文学を担当し、大きな啓蒙の成果をあげた人物。本書では、シェイクスピアやホメロスといった古典に触れながら、概説ののち、「昔話」「神話」「絵本」「ファンタジー」「知識の本」等々の各論に入る。いずれも、流行りものではなく、長い歴史に耐えた本を基礎に置いて語られる。2016/11/19
timeturner
7
ぱっと見は難しい本のように見えるが、石井桃子、瀬田貞二、渡辺茂男による訳文は丁寧でわかりやすく、子どもの本に興味をもつ人なら誰でもそこらじゅうにポストイットを貼りたくなるような卓見と考察にあふれている。2014/11/21
タンタン
6
本棚にずっと眠っていた本書をやっと読了。内容的には勉強になるが、原書が1953年に出版されているので紹介されている児童書や絵本が少ないのが残念。とはいえ読んでいない古典的名著がいっぱいある(やっぱり長年積読本)と反省しています。まずは神話から始めよう…2024/05/06
misui
4
良くも悪くも古いなぁ。「時の試練を受けた作品」によって確立された評価軸を批評に用いるといった古典礼賛の傾向が強くて、そこからはみ出した判断の難しいものになると、しばしば「とにかく読め」的なごり押しになっている。もう少し融通のきく読みが必要なのではと思うけど50年近く前の論であることを考えるとしかたないのか。とはいえ、基本でありながら近すぎて見えにくくなっている優れた見識もいくつか散見されるし、一応概論としてアウトラインを作る手助けにはなった。2010/03/01