出版社内容情報
日本海海戦を描いた戦争文学の金字塔
日露戦争は日本の近代史においてエポックメーキングな出来事であったといえます。その歴史的評価の是非は置くとして、日露戦争が現代の日本の出発点であったことは間違いありません。その意味で、この2作品は日本という国の本質を知り、また私たち日本人が受け継いできた精神性を理解する上で、貴重な一側面を提供しています。私たち日本人がその来し方を考え、そして未来を考えるためにも、本書は年代を問わず現代に生きるすべての日本人にとって必読の書です。
一九○五(明治三八)年五月二七日、東郷平八郎司令長官率いる連合艦隊は、当時無敵の艦隊として世界に名を轟かせた、ロシア・バルチック艦隊を日本海に迎え撃った。海軍大尉として従軍した水野廣徳は、日露両艦隊の戦力比較から、丁字戦法、後に東郷ターンと言われた奇跡の敵前大回頭など、日本海海戦の実像を臨場感をもって記した。また、戦闘の合間にある士官兵卒の会話、バルチック艦隊の大遠征、秋山真之中佐が敵艦に乗艦し降伏を受け入れる緊迫した場面などが克明に描かれる。近代戦争文学の金字塔とも言うべき大ベストセラーを復刊!
【著者紹介】 水野廣徳 (みずの ひろのり)
明治八(1875)年、愛媛県松山市に生れる。明治三十一(1898)年江田島の海軍兵学校を卒業。明治三十八(1905)年五月、海軍大尉(第41号水雷艇長)として日本海海戦に従軍。明治四十四(1911)年、本書『此一戦』を博文館から刊行。
その後第一次世界大戦戦時下および戦後の欧米諸国を視察、その惨状を目の当たりにし、一転して反戦思想家に転じ反戦・平和論を説いた。昭和七(1932)年、『打開か破滅か 興亡の此一戦』を出版するが、内容が問題となり直ちに発売禁止となる。この書は日米戦争を予想し、東京大空襲を予言、軍国主義者への警鐘を鳴らしていた。昭和二十(1945)年十月十八日、遺書に「百年後の知己を待つ」と書き残し、生涯を閉じた。