出版社内容情報
人間の在り方を模索した哲学者スピノザ。神なき時代を予言した哲学書『エチカ』は,当時異端と目されもしたが,後世に長く読み継がれる一書となった。フロイトも言及したスピノザの思想には,精神分析そのものと言える部分があり,哲学者だけではなく,フロイト以降の多くの精神分析家や心理療法家を引きつけている。
本書は,精神分析家として,精神科医として多くのクライエントの心を見つめている川谷大治によるスピノザの哲学を真っ向から扱った一冊である。スピノザの精神分析とは何か。スピノザの思想が精神分析にもたらすものは何か。長年の治療経験と思索から,深く広い「エチカ」と精神分析の世界を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遊動する旧石器人
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2024年6月30日第1刷。スピノザの『エチカ』を基にして、境界性パーソナリティー障害患者に対する精神療法・精神分析について述べた1冊。自身は、筆者とは異なり、哲学的側面から精神分析を見ているため、哲学を背景としない精神分析家によるスピノザ『エチカ』の評価については分からないが、少なくとも、『エチカ』の内容が精神分析にも示唆的であることは言を俟たない。問題は、本書が何を主張したいのかが明確でなかった点にあり、『エチカ』的に筆者の精神分析がこのように解釈出来るとした1冊であり、その結論は未来に委ねられる。2024/11/13