内容説明
東大入学とほぼ同時に、統一教会に入った著者は、一一年半にわたる入信生活の後、脱会して学者の道へ。「元統一教会信者」という言葉がもたらす偏見と差別。その根源には、いったい何があるのか?気鋭の哲学者がその数奇な半生をつづり、みずからの宗教体験を振りかえる。
目次
序章 消せない記憶
第1章 広島県呉市
第2章 統一教会との出会い
第3章 原理研究会と左翼
第4章 信仰の日々
第5章 疑念のはじまり
第6章 脱会
第7章 宗教を考える
終章 体験としての統一教会
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は、『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふみあき
30
著者の統一教会における11年半の信仰生活が自伝的に綴られている。面白かったのが、現在は気鋭の政治哲学者である著者だが、決して文弱の人ではなく、東大生時代には民青や新左翼系の学生相手に学内で大立ち回りを演じていたこと。鼻の骨をへし折られたり、唇を3針縫う怪我を負うも、左翼学生のこめかみを殴りつけて失神させたり、なかなかの武闘派だったよう。また脱会者は一般に、自らの古巣に厳しい態度を取るものと思っていたが、著者はあくまでも中立(と言うよりも、むしろ擁護が目立つ)。それ以上に左翼への強い憤りが伝わってくる1冊。2022/07/29
紙狸
22
2020年刊行。旧統一教会の教義をおさえておきたい、と思ったが、報道では見当たらない。この本は教義を分かりやすく書いている。著者は大学時代に入信し、紆余曲折を経て脱会し、哲学・思想史の学者となった。麻生建さんという東大教授(故人)が、著者を信者と知りながら大学院に受け入れてくれた。この人のお陰で今日の著者がいるのだな。統一教会は旧約・新約聖書よりも解説書「原理講論」を重んじる。堕落した人類が救われるにはイエスの救いだけでは不十分だとする。信者は何をなすべきかを説く。「物売り」もこの図式の中に位置づける。2022/08/29
紫羊
21
この本は統一教会に関心があって購入したものではない。著者のハンナ・アーレントについての解説本の内容が非常に丁寧でわかりやすく好印象を持っていたので、どういう人物なのか知りたくて入手したものの読まずに置いていた。このタイミングで読んでみて、統一教会という宗教組織のことより、赤裸々に語られる著者が抱えていた生きづらさのほうが心に残った。たまたま統一教会だったという独白は真実だと思う。2022/09/05
原玉幸子
15
仲正は年齢が3歳違いの略同世代で「原理研究会」も左翼・学生運動の最後の残り火も、教育環境で影響を受けた同和問題も朝鮮人問題も、肌感で分かるが故に、へぇーっです。浮かばれない地方大学の教授の処遇を語る時然り、本人も自覚の暗い性格もあってのアイロニカルな表現に苦笑しますが、本書の核心は、決して新興宗教批判ではなく、同氏の生い立ちから入信・脱会を経た、その劇的な人生を通じて語られる第7章『宗教を考える』での「宗教とは何か」に説得力と価値があります。これも又、宗教の一側面……さもありなんです。(◎2021年・春)2021/03/05
owlsoul
6
新興宗教への関心で手にした本だが、奇しくもタイムリーな選書となってしまった。統一教会は、創世記のアダムとエバが悪魔と性交したことでエデンを追放されたという解釈のもと、信者の男女関係に介入する。人間が暮らす世界の万物はサタンの手の内にあり、信者はサタンからそれらを取り返し神へ捧げなければならない。その最たるものがお金だという。著者は大学入学と同時にサークル感覚で統一教会に参加。本書ではその体験談が淡々と綴られる。しかし、著者は教団に対してというより、人生そのものに鬱屈を感じているようで、読んでいて辛かった。2022/07/10