内容説明
本書は、鬼才・小栗虫太郎が博覧強記でペダントリーに富んだ作風を作り上げた処女作「或る検事の遺書」から昭和13年3月までに発表された「地中海」までの17篇を収録した探偵小説の醍醐味豊かな作品の数々である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南都田
1
読んだのは中学生の頃(記憶が曖昧)。初めに収録されてる『或る検事の遺書』が好き。長さも小栗作品の中では短めなので時々ここだけ読み返します。読み終わったあとの虚しさがたまらなく好きなんですよね。法水シリーズ読了後だったので『小栗作品は雰囲気を楽しめれば…』みたいに割り切っていましたが。
伯修佳
0
「黒死館殺人事件」のペダントリー色の強さに閉口したが、短篇集はまとまり良くそれでいて鋳型にはまらない作品が揃っている気がした。探偵小説から国際冒険小説への過渡期にあったのと、掲載される雑誌が純文学のものもあったらしく非常にバラエティー豊かでかなり読み応えがあった。勿論、彼一流の広く深い知識を取り入れたトリックもきちんと使われていて、当時ならではの人間性の追求などもあり、ご都合主義の大団円などは全くないのが良い。同性愛描写は好みの分かれるところ。2011/11/27