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出版社内容情報
北朝鮮事典・書評選
驚くべき種類の図像、装丁までマニアック
思わずこの本に手が伸びたのは、装丁のデザインの痛快な違和感だった。金日成と金正日が、悪いことはまるでしたことがないという笑顔で、にっこりと白い歯を見せている。それが赤青黄のカラフルな色と、英語とハングル文字に飾られて、ひと昔前のウォーホールのポップアート、毛沢東が口紅を塗ったような感じのあれを思い出した。しかもこの本は厚さが三センチ近くで、その木口(こぐち)をぎゅっと伸ばすと金日成像があらわれ、逆方向にぎゅっとやると金正日像があらわれる。
マニアックな印象である。中を開くと全部切手なのでまた驚いた。下の段に切手の写真がずらりと並び、上にはその解説がぎっしり。その項目が「あ」から「わ」まで順序よく流れて、本のタイトルが「北朝鮮事典」だから、なるほど、うまいなと思った。
北朝鮮はいまや世界随一の「思想」の国だ。正しい「思想」のもとにすべてが整えられている、らしい。
一方切手というのは、考えてみればすべて意味ある図像だ。無意味な図像などあるわけもなく、人物も、建物も、山や風景も、キムチでさえも、すべてが意味づけられる。
ということで、考えたら北朝鮮と切手というのは、あんがい相性がいいのだろう。
切手はもとは郵便の印紙に過ぎないけれど、一方では数あるコレクションの中の最大アイテムとなっているから、そこを狙っての珍種発行ということが、とくに小国の外貨稼ぎとしておこなわれている。その点でも相性はいいのだ。
しかし驚くべき切手の種類で、これがみな蒐集品(しゅうしゅうひん)なのだろうか。蒐集のエネルギーというのは切手に限らずカメラ、時計、骨董(こっとう)その他もろもろ、ある種の低温火傷(やけど)の広がりみたいな、恐怖と恍惚(こうこつ)があるものである。この本の「よ」のところ、よど号事件の切手はさすがにないが、「この郵便物は、乗取り事故の日航機に搭載されていたため遅延しました」という付箋(ふせん)つきの封書が掲載されている。この微細な努力の強力さが、じつにあぶない。
(朝日新聞・書評、2001年2月18日 評者:赤瀬川原平)
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アントニオ猪木に田村亮子ノノ北朝鮮の切手には意外な人が登場している。この「何で彼らが?」を出発点に、いまだ謎の多い「北朝鮮国家」を600点もの切手や各時代の郵便資料を基に読み解いていくユニークな博覧事典。歴史の勉強にもなります。
(ダ・ヴィンチ2001年4月号 「今月の注目本100冊」 CopyrightゥMEDIA FACTORY 2001.All rights reserved.)
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世界郵便制度の確立は、1874年の万国郵便連合の発足をもって始まりとする。つまり、郵便という事業には、そもそも19世紀的な国家の刻印がまとわりついているのである。民営化が議論される今日の日本で、このことを意識する人はほとんどいない。しかし、目を外に転じれば、郵便制度が国家のメディアとして機能する国はまだ数多いのである。
本書は、朝鮮民主主義人民共和国発行の切手を読み解くことによって、切手に表現された国家意思と、人々のエトスとをあらわにする試みだ(著者はこれを「郵便学」と呼ぶ)。
600点を超える豊富な切手図版を使って展開された項目解説には、紋切り型の北朝鮮像を壊す痛快なリアリティーと、「遊び」がもたらすさまざまな発見に満ちている。「朝鮮戦争」の次に「朝鮮人参」が来るという50音順の無機質な秩序や、「力道山」や「テレサテン」が混じるというアナーキーな結果も、「郵便学」が持つ魅力だと言っていいだろう。そこにはアルファベット・オーダーを中世教会ヒエラルキーに拮抗させてはばからなかった、啓蒙時代の百科全書派に似た力が感じられるのである。
既存体系にこだわらぬ本書の元気さは、ページの小口(背と反対側のページの外側に当たる部分)に、少しずつずらして印刷された金日成と金正日の全身像にも感じられる。本を右にかしぐと左を向いた父親が、左にかしぐと右を向いた息子の全身像が、まるで隠し絵のように現れるという仕掛けなのだが、これを親子の政治姿勢を暗示した謎掛けだと深読みしたら、著者からはどんな答が返ってくるのだろうか。
(Amazon.co.jp、評者:今野哲男)
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「みなさあん、よろしいですかあ…1!2!3!ダアアアアーッ!」
ていう、いつものやつを、朝鮮語で何と言うのか知らないが、とにかくアントニオ猪木さんがそう叫んでいる切手があるのである。北朝鮮には。
北朝鮮――われわれ日本人にとってはいまだ不可思議の国である。しかし、この国にももちろん郵便制度はあり、とうぜん切手が発行されており、しかもその切手は日本でも買うことが出来る。そして、われわれはてんで気づかなかったが、その切手の小さな図像のなかに、じつはこの国のさまざまな情報が、もれなく映し出されていたのだ。
前作『マオの肖像』(雄山閣)で、人民中国近代のからみにからんだその歴史を、「切手」で切って、見事にひもといてくれたあの著者が、またまたやってくれました。今度は北朝鮮に挑戦だ!
政治、経済、主義主張。社会、法律、地理歴史。動物植物、大人物。いまだお堀の向こうたる、感のぬぐえぬ一軒隣。北朝鮮のお国のことが、切手でなんでも解ってしまう。新世代の博覧事典。
どんなヒミツの国だとて、そこに切手のある限り、内藤郵便学は行く!
(雑誌『しにか』2001年5月号・書評より)
内容説明
Philatelyとは何か?一般に「郵趣」と訳されるが、欧米では高尚な学術分野としても認識されている。著者は、切手が国家のメディアであるとの視点から北朝鮮切手や各時代の郵便資料を縦横に駆使して「北朝鮮国家」を読み解いていく。隠された国家の意志が徐々に見えてくるさまは推理小説よりスリリング。本書は謎の国家北朝鮮に迫る異色のドキュメントであると同時に現代史への知の旅といえる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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