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出版社内容情報
東京下町の幅広い読者に愛読された庶民の新聞。黒岩涙香・中里介山らの作家を生み出した文芸欄,多数の芸能記事,充実した商況欄。近代文学,社会史,経済史,芸能史研究者必見の資料。国立国会図書館と東大法学部明治新聞雑誌文庫の全面協力を得て復刻。
【都新聞略史】
明治17年(1884)9月3日、『都新聞』の前身紙である『今日新聞』が東京京橋で夕刊紙として創刊された。小西義敏、仮名垣魯文、野崎左文らを中心に芝居だより、粋な花柳記事を売り物にした『今日新聞』は政論新聞全盛の時代にあって異色の新聞として大いに注目された。明治21年に『みやこ新聞』と改題、さらに明治22年に『都新聞」と改題し、紙面も拡充発展させた同紙は、明治の大衆文化を花開かせ、庶民の生活を活写した貴重な新聞資料として今日ますますその意義を高めている。『都新聞』の特長は、なによりも文芸記事、連載小説にあった。主筆黒岩涙香によって続々と翻案された探偵小説は、文字どおり新しい、時代にふさわしし、エンタテインメントとして大いに人気を博した。さらに中里介山、伊原青々園、遅塚麗水、長谷川伸、平山蘆江などを記者として擁し、彼らが連載する大衆小説は明治の文化を象徴する「都の華」でもあった。歌舞伎、大衆演劇などの劇評、音楽評、さらに艶ダネ記事なども他紙の追随を許さないものがある。同時に「商売人の虎の巻」「実業家の相談相手」を標傍し、株、物価動向など商況面にも力を入れ、勃興しつつあった近代的経済活動のたくましい、エネルギーも盛り込んでいる。こうして『都新聞』は庶民の生活、意識をも反映した貴重な資料として、政治史、経済史、文化史、社会史、風俗史、文学史、メディア史など各分野で活用されている。『都新聞』は昭和17年10月、政府によって『国民新聞』と強制的に合併され『東京新聞』となり、今日に至っている。
【都新聞のできごと】
7月30日 八王子横山町53に遍信局を開設。
9月13日 藤並羊造、大谷誠夫、従軍記者として戦地へ向かう。
【主な連載小説】
桜の御所(村井弦斎)/女の首(不知火訳)/写真術(村井弦斎)/朝鮮征伐(「鎧の風」)(村井弦斎)探偵叢談・山田実玄 /志豆機山(菊酔山人)/人鬼(渡辺乙羽)他