内容説明
ポケット版の分量ながら、ローマ人の古拙な儀式や訴訟を丁寧に説明し、彼らがそれらを維持しつつ、近代の法制度にまで影響を与えた法をいかに発展させていったかを鮮やかに描き出したローマ法の入門書。
目次
第1章 十二表法までの先史および原史時代
第2章 十二表法の新たな法
第3章 十二表法から共和政末まで
第4章 ローマ法の古典期
第5章 ユスティニアヌス帝までの古典期以後の展開
第6章 ユスティニアヌス帝法
第7章 ユスティニアヌス帝法のその後
著者等紹介
田中実[タナカミノル]
1959年京都府生まれ。1982年関西学院大学法学部卒業。現在、南山大学法学部教授
瀧澤栄治[タキザワエイジ]
1954年新潟県生まれ。1979年東北大学法学部卒業。現在、神戸大学大学院法学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲオルギオ・ハーン
18
ローマ法の歴史についての本ですが、もう少し十二表法を中心とした古代ローマの法律を把握してから読むべきだったかと後悔。内容は興味深く、奴隷の所有を表明する際の握取行為についての説明やローマの国庫を潤した相続法については詳しく知ることが出来て勉強になりました。ローマ法についても詳しい本が他にあれば読んでみたいです。市民権の有無はあまり差にならなくなったのでカラカラ帝の全帝国民にローマ市民権を与えた政策の影響はほとんどない、としているけど本当にそう解釈していいのか少し疑問に思いました。2020/12/17
34
16
ルジャンドルは西洋の最初の、そしてもっとも重要な革命は12世紀の「解釈者革命」であったと言っている。それはローマ法の発見に端を発するものだった。それによるとローマ法は、西洋の、従ってわれわれの世界の礎を築くエクリチュールのひとつなのだ。本書はそのローマ法のエッセンスを概説したものだが、とくに、著者が「古拙」と呼ぶいまだ原始宗教的な意識をとどめた段階から、ローマ法の精神への連続的な移行を述べた前半が興味ぶかい。ローマ法の普遍性を知ることは、ある意味ではわれわれ自身の特殊性を知ることでもあるのかとおもった。2017/01/05
TMHR ODR
4
★×3。今まで読んできた古代ローマ史本で軽くしか触れられてこなかった法律、特に所有権、相続、家父長、婚姻、損害賠償といった民法上の経緯や特徴を例を挙げながら説明してくれている稀有な本。ただし、文章が法律臭すぎて難しい。とりあえずドイツでは19世紀末まで活きた法律だった、当然大日本帝国憲法や日本国憲法はこれを引き継いでいるということは間違いなし。2017/01/30
Saiid al-Halawi
3
共和政期の十二表法成立前後に絞って実際的な法運用の転換を見ていくっていうような1冊。ようするに共同体としての「ローマ」が伸張・拡大し、次々と異民族をその社会内部に包摂していく過程にあって、十二表法成立によってルールの運用がどう変わったか、という。著者が「古拙」と呼び表すそれまでの各種法律群は、ちょっと部族法じみてる。2012/04/03
Hisashi Tokunaga
1
財産法関連の記述を中心に読み進めてみた。ギリシャやキリスト教の影響を受けたことについての記述は少ない。それだけローマ法が市民法として純化したということか。ただし、ローマ市民社会が国家形成してく過程で、国家の法あるいは体系を構築していくうえで様々なファクターがあるわけだが、その辺がややぼけていないだろうか。ローマ法の理解は一日してならずというところか。2012/09/27