内容説明
最期の時に聞きたいと願う歌。まるで黒沢明の映画を見ているようだという俳句。「桜月夜」「やは肌」と歌った明治の女流歌人。日本語の美しさを最もよく表している「湯上がり」の歌。「こいも団栗、こいも団栗」と母を知らない子は母と同じように団栗を拾い続ける…。日本語研究に邁進した60有余年の日々の中で、著者自身が折々に出会った「大切な日本語」について、過ぎ去りし日の思い出とともに優しく書き下ろした。この一冊に日本語の美しさ・魅力が凝縮されています。
目次
1 夢見る童謡の世界
2 心に響くわらべ唄・子守唄・唱歌
3 俳句が描く言葉の宇宙
4 男と女のものがたり短歌
5 温故知新の古典の名場面
6 味読熟読の知られざる傑作小説
7 宝物は言葉でできている
著者等紹介
金田一春彦[キンダイチハルヒコ]
大正2年、言語学者金田一京助の長男として東京に生まれる。昭和12年東京大学国文科卒業。専攻は国語学。名古屋大学、東京外国語大学、上智大学で教授を歴任。現在は玉川大学客員教授。『日本語』『日本の方言』『国語アクセントの史的研究』『日本語方言の研究』『平曲考』等著書多数。『現代新国語辞典』『新明解古語辞典』『十五夜お月さん』等、辞典の編纂も多い。平成9年文化功労者受賞
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
109
自分の経験を紹介しながら、好きな童謡や俳句、小説の一部を紹介していく新書。日本語の繊細さ、美しさ、温かさを改めて感じられるようになる。これは本当にお勧め。特に1章と2章が良かった。作者の好きな童謡、わらべ歌、唱歌などが幼い頃の思い出と共に語られていく。子供の時に母に歌ってもらった子守唄(「坊やはよい子だ」)も紹介されており、本当に懐かしい気持ちになった。童謡や子守唄の日本語の柔らかい言葉の響きに身を浸していると、心の中の屈託が消えていくような気がした。2018/05/18
ねこ
5
とりわけ短歌や俳句が面白く、文人のお仲間との何気ないやりとりが印象深い。金田一春彦さんのお母さまのなんともな発言はやはり名言ですな。2019/01/01
双海(ふたみ)
2
「桜月夜」「湯浴み」・・・美しい日本語らしい日本語を大事にしたいと思いました。詩歌にますます興味がわきます。
カケル
1
著者金田一春彦自身が忘れられない日本語、名文、秀句を集めた内容になってしまっているのだが、おもしろい。著者自身の体験や考えがそれぞれの文や句に添えられていてわかりやすく、文との距離を埋めてくれている。よくある形式ではあるが普通では有り得ない体験などがスパイスとなっていて、驚きや感心と共に読み進められるのが実に小気味よい。他にもわらべ唄や唱歌、童謡と多岐に渡るがどれも素晴らしいものばかり。この本を足掛かりとして様々な文を愉しんでいっても良いかもしれない。「春風や闘志いだきて丘に立つ【高浜虚子】『虚子句集』よ2013/03/21