内容説明
「何ものかを問題にするさいの鉄則は、その対象を具体的に描くことにある」。この鉄則から見たとき、「天皇」は近現代小説において、その近傍からいかに描写されてきたのか、あるいはこなかったのか。明治・大正・昭和・平成の天皇・皇族の姿を、作中人物として描く小説の系譜(天皇小説)を通し、現実の政治的・社会的な諸力と、小説との間に引き起こされた葛藤、軋轢、抵抗、妥協、共謀などのさまざまな様相をたどる。「この国で小説を書く/読むとはいかなることか」という問いを要に、現代の文学風土になおも仄暗くわだかまるなにものかの正体を、可能な限り明瞭・直截な言説で提示し、渾身の力をもって刎出する。青山真治氏による力作解説を収録。
目次
序文 明治一五年=昭和三五年
第1章 不敬罪と小説
第2章 大逆事件と小説
第3章 民本主義とプロレタリア文学
第4章 戦後天皇小説の群れ
第5章 現代文学のなかの天皇
終章 黙説法の政治学
付論 今日の天皇小説
著者等紹介
渡部直己[ワタナベナオミ]
1952年、東京生れ。早稲田大学大学院修士課程修了。近畿大学教授。文芸評論家。柄谷行人、蓮實重彦、ドゥルーズ、バルトらの強い影響を受け文芸批評家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いいほんさがそ@蔵書の再整理中【0.00%完了】
17
*天皇小説論*天皇ネタの小説読解の為読了。『何ものかを問題(テーマ)にする際の鉄則は、その対象を具体的に描くことにある』。賛否は別として、天皇・皇族を作中人物として描く小説(天皇小説)。今尚、文学風土にわだかまる諸問題を刎出する力作(紹介文・他より)――さて、天皇小説である。勿論、様々な賛否両論は社会的にお有りだと思います。だが、天皇・皇族を小説の登場人物として登場させるこれらの小説作品は既に多数存在しています。 ⇒続き 2013/11/09
Miss.W.Shadow
1
再読。山手線をグルグル回って中心に何もないとか、出雲大社の真ん中に何もないとか、そういうのって英語で言うとBeat around the bushっていうんだよって冗談を当時は言ってたなw2011/11/03
トックン
0
ブンガクの無力感。<大逆事件>をメルクマールにして漱石の『こころ』のKを天皇Kingと幸徳秋水のイニシャルと読み込むことで不敬文学の系譜へと位置づける。ただ、この経脈はプロ文崩壊後(昭和30年代)私小説へと流れ込み、タブーは不可視のものとされる。サブ文学の探偵小説も自然主義的描写(長谷川天渓を乱歩は同士とする)に凝ることで私小説と大差なし。戦後、大江や阿部和重(『シンセミア』の田宮家=天皇家)に不敬は受け継がれるも、天皇家のホームビデオの登場の前には無力となる。2017/06/25
ぺてん師
0
明治期から現代における天皇をめぐる小説を軸に。 タイトルの通り。
犬猫うさぎ
0
小説が、ある存在を問題にするさいの最強の原則は、必ずしもそれを批判し風刺・揶揄することにあるのではない。たんにまず、その存在を間近に描くことにある。(127頁)2025/04/16
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