内容説明
私たちはかつてよりも自由になったが、ひとびとの間から相互的に生み出される不確定性によって、かえって「自由である」ことが困難になっている。不確定性に満ちた社会において「自由である」ことを手放すことなく生きるために必要とされるものは、伝統や権威にではなく、平等感覚・公正感覚にもとづいた新しい形の社会的信頼である。
目次
まえがき
第I部 信頼にいたらない世界
第一章 自由は増え、信頼は失われる
第1節 当たり前は当たり前でなくなる
第2節 晩婚化・非婚化の趨勢――結婚の場合
第3節 社会移動の趨勢――仕事の場合
第4節 しかし、それは自由な選択なのか?
第二章 自由は増え、アイデンティティは傷つく
第1節 自分のことは自分で決められる(決めなければいけない)時代
第2節 未婚者の階層意識
第3節 就職活動という不確実なもの
第4節 問題はどこに?
第II部 それでも信じることの意味
第三章 信頼の二つのタイプ
第1節 リスクを共有し、分散する
第2節 信頼の二つのタイプ
第3節 他者から逃げるための信頼
第4節 他者と向き合うための信頼
第四章 信頼の構造
第1節 誰がどのような信頼をもつのか
第2節 教育と二つの信頼
第3節 社会に対する信頼
第4節 いま社会を信じるために
第五章 信頼と民主主義
第1節 世界各国との比較
第2節 世界にみる公的な制度への信頼の意識構造
第3節 世界にみる一般的信頼と教育達成との関係
第4節 権威主義から公正へ
注
文献
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buuupuuu
21
社会が自由になっても、望んだように生きられるとは限らない。自由になるとは、不確定になるということでもあるからである。リスクにさらされることにより不安が増し、自己肯定感も毀損されてしまう。著者はこのことを、結婚と就職を例にとって説明している。不確実性に対処するには、社会的に自由を制限するか、リスクを広く分散する仕組みを作るかしなければならない。そして、私たちは自由な社会に生きているのだから、後者のやり方を採用するしかない。リスク分散的な仕組みが備わっている社会では、教育水準の上昇が、社会への信頼の鍵になる。2024/12/08
りょうみや
21
著者の本2冊目。前半が自分で自由に選べるが選ばれる立場でもある結婚と就職の具体的な話で、そこから自由の信頼性、やり直しのできる社会制度の話になっていく流れは面白い。数理社会学者らしく数式は使っていないがゲーム理論的な考え方がよく分かる。自由と信頼の関係と定義を改めて深く考えさせられる。2022/07/21
ぽん教授(非実在系)
4
自由が不自由を生むパラドックスの話から始めて山岸説を拡張して信頼ⅠとⅡに至るところまでは学説整理的な個所であり、実際に分析するところは応用編か。権威主義的な信頼Ⅰに対して信頼Ⅱが望ましいという命題自体は分かるが、昨今では大学や市民団体の狼藉がクローズアップされていて信頼が崩壊しているように見える中で、本書の結論部分は大いに変わってしまったのではないかとも感じる。2021/11/17
Toshiyuki S.
4
自由が増すことで選択にともなう不確定な要素も増え、かえって自由の質が下がってしまうことが結婚と就職を例に議論されていて、それについてはイメージしやすかった。その後の信頼を主軸としたデータ分析は、議論自体は興味深かったが、抽象度の高い一般的な問題へと議論のレベルがシフトしていたため、前半で述べられていたトピックへのフィードバックがほしかった。リスクの分散や期待値にもとづく行動(選択)といったキーワードを結婚や就職に当てはめるとどんなことが言えるのか、そこをもう少し知りたかった。2015/04/09
偏頭痛
3
「自由でありさえすればいいのではない。どのように自由であるかが問題なのである。」自由を得たために不自由になっているなどそのように時代の変化で良くなっていると思われるものが本当に良くなっているのか?というのを改めて検証している内容。確かに選択が増えたからといって幸せになれてるいるのかといえば疑問ではある。しかしアンケートなどデータを元に証明をしようとしてるものの信頼など人の頭の中にしかないようなものでなかなか厳しいところもあったりという印象。2014/11/19
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