内容説明
思いだされるために競馬はある…。鎮魂寺山修司、競馬全エッセイ完全復刻。
目次
さらばハイセイコー
競馬無情(かなしい女のブルース;ダメおやじの馬たち ほか)
黒鹿毛の詩(片目のスタンダード;障害の天才タカライジン ほか)
おさらばという名の黒馬
騎手伝記(中島啓之;柴田政人;吉永正人;小島太;郷原洋行;嶋田功;赤羽秀男;福永洋一;武邦彦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うさを
1
前の『旅路の果て』が面白かったから、寺山の競馬エッセイを探したが、新刊書店では見つからなかった。それで、図書館でこの本を借りた。読書メーターでは復刻版か角川文庫版しか出てこないが、図書館の本は1976年の新書館の初版だった。本書の「騎手伝記」でとりあげられた一人、福永洋一もまだあの落馬事故に遭っていない。そういう時代の息遣いが閉じ込められている気がした。「人生という名の競馬場には/次のレースをまちかまえている百万頭の/名もないハイセイコーの群れが/朝焼けの中で/追い切りをしている地響きが聞こえてくる」2023/11/22
時雨
0
夭逝した詩人による競馬エッセイ集の復刻版、その第2弾のつもりで読んだが正しくは第3弾らしい。1990年1月(旧版1976年10月)初版。/「人は誰でも自分に似た馬をさがして賭ける。」(p74)人生の悲哀を競走馬に見出してしまうのは競馬ファンの性だが、「人生は競馬の比喩だ」との言辞を裏付けるかのように、競走馬の側は馬券購入者が仮託したものなど露知らず走り、しばしば予想を裏切るという非対称の関係がある。「競馬無情」「黒鹿毛の詩」の部のほか、私小説風の短篇「おさらばという名の黒馬」、9人分の「騎手伝記」を収録。2024/12/15