内容説明
文豪の息子として生まれたために、悲劇もあり、また喜びもあった。どうにか生きようとした類の人生はけなげであり、また誠実なものであった。類の80年の生涯を描く。研究史上、貴重でかつ初公開の日記・書簡を公開する。
目次
類の誕生―鴎外の活躍期
期待されし類
鴎外を愛した類たち
類の学業不振―奈良からの葉書
鴎外の苦渋
茉莉の結婚、そして鴎外の衰弱
鴎外の死
母志けの落魄
類の絶望的な学業
隠花植物のような存在〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
itokake
8
偉大過ぎる父を持った子供の人生を、実際に類と晩年に交流を持った著者が丁寧に書き上げた。類の文章が多く引用されている。類の書いた著作をまとめて読めないので、この本は大変貴重。日記や手紙などから、類の飾らない人柄、そして人を見る眼の鋭さが浮かび上がる。『鴎外の子供たち』で削除された、姉の森茉莉が卒倒したという描写も一部ある。類はたしかに文才があった。もっと評価されていい人物。森類全著作集が出てもいいものを。朝井まかて『類』が、もっと面白いものならその機運も高まったのに。2021/11/02
mn
4
森鴎外の子どもたちに関する本の中でも秀逸な一冊。偉大な父を持つ息子の鬱積に耐えながらも、誠実で几帳面、独特の魅力を持つ森類の生涯が描かれる。「いま目の前に居る類氏は、何の気負いもなく、おっとりとして、じいっと眼を据えて、ほほえんでおられた」という73歳の類に出会って惹かれた著者自身も誠実な人に違いない。2021/05/17
泉を乱す
4
叔父に借りて読んだ。ほとんど彼らの手紙と鴎外の日記と森茉莉の小説とからの引用だが、最後は筆者の実際に出会った印象が記してある。森杏奴、恐ろしい。2018/03/22
七波
3
森鴎外の子供の中で一番好き。鴎外の子供たち―あとに残されたものの記録を読んでこちらを読んだ。彼の生き方を丁寧に追っていて好感が持てる。満足できた。
かの子
1
類さんを偉大な父親を持つ不肖の息子というふうに描くのは簡単だけど、それだけではない類さんの長所も描けていた点が良書だと思いました。2018/03/07