内容説明
一九九七年、日本赤軍のハイジャックによってアラブへわたり、10年後、フィリピンでとらえられた「刑事囚」泉水博の数奇な人生を哀歓こめて描き出し、大江健三郎氏が「同時代史の傑作」と絶讃した感動のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
8
日本赤軍といふ存在には、共感しないが関心はある。泉水博といふ人については、人名とWikipediaに出てくる程度の知識があつたくらい。本書は極左テロを生んだ背景や、その中の人に関心を寄せる著者が、泉水博といふ特異なコマンドの評伝を、赤軍の発表したもの、裁判記録、親族の証言等からまとめたもの。70年代の学生運動から出てくる極左テロの思想と、任侠的心性を持つ人物とが出合ひ革命に目覚めるといふ辺りが、この時代ならでは。千葉刑務所で一緒だつた受刑者に野村秋介がをり、泉水の「義挙」を彼が広めたといふのも面白い。2017/09/03
りゅっく
2
オウムと赤軍の集団心理に昔から興味津々。そもそもが事件そのものを知らない私、泉水さんの人生の流転は並みのドラマじゃ描けない・・・もっと世間が注目すべき人2014/10/03
Ikuto Nagura
2
強盗殺人で無期懲役囚(杜撰な捜査と裁判だったらしい)ではあるが「どんな小さなことであれ、恩をうけたら返せる人間、また自分のできる範囲で人の力になるというんですか、人のためになる」という常識的な義侠心を持った泉水博。そんな義侠心が彼をして、仮釈放を潰し、ダッカ事件の超法規的措置を招き、日本赤軍兵士として活動させ、再び無期囚に戻させる。人質のために取った自己犠牲の行動を「逃亡」と決めつける政府への怒りと人間不信。その義侠心を認めてくれる日本赤軍同志への感激。国際テロ集団に劣る政府官憲の人間観は、一体何なのだ。2014/07/11
seichan
1
何しろ本人の言質がまったく取れないので、周囲の証言とか状況とかで書いていくしかなく、そのあたりが食い足りなかった。しかし浪花節を絵に描いたような泉水と理論武装優先だった赤軍の化学反応は、現場ではけっこう面白いものだったんだろうなぁ。2015/05/09
tecchan
0
25年前出版の古本。1977年ダッカ事件の人質交換で超法規的措置で出獄し日本赤軍と合流した「泉水 博」を追ったノンフィクション。日本赤軍と全く関係のない人物が何故、指名されたのか、泉水博とはいかなる人物か、その背景はなど、当時疑問に思っていたことを明らかににしている。まだまだ分からないことは多いが。2018/11/12