ミドルセックス

ユージェニデス，ジェフリー【著】〈Ｅｕｇｅｎｉｄｅｓ，Ｊｅｆｆｒｅｙ〉/佐々田 雅子【訳】

早川書房（2004/03発売）

• サイズ B6判／ページ数 733p／高さ 20cm
• 商品コード 9784152085542
• NDC分類 933
• Cコード C0097

内容説明

デズデモーナとレフティーは姉弟でありながら、深く愛し合っていた。１９２２年、ギリシャとトルコの戦争で村が壊滅し、二人はいとこ夫婦を頼りにアメリカ、デトロイトへ夫と妻として渡る。やがて、二組の夫婦の子供、ミルトンとテッシーが惹かれ合うようになる。１９６０年、そこに生まれた待望の女の子がわたし、カリオペだ。車産業が隆盛を誇る街デトロイトで、祖父が始めた食堂を父が繁盛させ、わたしは大事に育てられた。女子高に通うようになったわたしは、自分の体つきに悩み、ある同級生への熱い想いに苦しんでいた。そんなある日、自分がふつうの女の子ではないことを知ったわたしは、激しい衝撃を受け、家族のもとを飛び出すが…。あるギリシャ系一家で紡いできた稀有な歴史を壮大に描く、現代の神話。女と男、二つの性を授かった一人の人間の数奇な運命を描くピュリッツァー賞受賞作。

著者等紹介

ユージェニデス，ジェフリー［ユージェニデス，ジェフリー］［Ｅｕｇｅｎｉｄｅｓ，Ｊｅｆｆｒｅｙ］
１９６０年、アメリカのミシガン州グロスポイント生まれ。ブラウン大学、スタンフォード大学で創作を学ぶ。さまざまな職業を経て、１９８０年代には一時、映画脚本家をめざす。その間も「ニューヨーカー」など一流文芸誌で活躍し、やがて執筆活動に専念する。１９９３年のデビュー作『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』は、ジェイ・マキナニーらに絶賛され、アガ・カーン賞をはじめ数々の賞を受賞。ベルリン在住。『ミドルセックス』で、２００３年のピュリッツァー賞受賞

佐々田雅子［ササダマサコ］
立教大学文学部英米文学科卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[遥かなる想い]

2003年ピュリッツァー賞。 女の子として 育ち、男として 大人になった 人物の物語である。 デトロイトを舞台にした 祖父母からの 家族の歴史は、視点を変えたアメリカの歴史でもあり 興味深い。 二つの性を授かった一人の人間の物語 …自分の肉体的特異性と どう向き合いながら、生きるのか… ギリシャ系一家の 壮大な家族史でもあり、 不思議な感覚の作品だった。

2019/09/22

[ケイ]

両性具有の語り手の性を考えると、ミドルセックスとはトリッキーなタイトルだ。女の子に生まれ徐々に男性となっていくが、完全ではないカル。その原因をギリシャ系移民のサーガの物語として描いている。語り手自身はなかなか自分の事を語らないため彼自身が性の問題を克服しきっていないように見えるのは作者の筆力。ギリシャ移民の歴史も描かれた意欲作。例えば「100年の孤独」ならばさらりと読める親や祖父母の恋愛が、ここでは妙に気恥ずかしい思いがした。祖父母の出来事に関しては、私は口に手を当てて堪えたくなるほどおぞましいと思った

2016/10/11

[NAO]

染色体異常によって両性具有者として生まれたカリオペ（カル）・ステファイデスの誕生から現在までの物語と、戦乱のトルコを逃れてアメリカに移住してきたカリオペの祖父母レフティーとデズデモーナの家族史。トルコの中に存在した、閉ざされた小さなギリシャ人だけの共同体。そういった村の特異性が密かに積み重なって、一人の人間の中に特異性を出現させた。それは、万人に共通の経験から遠く隔たった物語でありながら実は誰にでも覚えのある物語となる、現代の神話ともいえるかもしれない。

2019/08/25

[こばまり]

素晴らしかった。悲劇と喜劇が一体となった一大叙事詩に心底酔いしれた。人間一人ひとりの存在は稀有だが、家族という集合体は普遍的なものではなかろうか。時代性や境遇に共通点はないのに、自らのルーツについて読みながら幾度となく思い返す濃密な読書時間を過ごせた。

2016/11/03

[ヘラジカ]

豊潤でダイナミックな物語に惹き込まれ、二晩かけて一気に読了。本を持つ手が痛くなるくらいのページ数に、序盤は「長い、減らない」と溜息を吐きながら読んでいたが、読み終えた瞬間は続きがないのを残念に思う気持ちでいっぱいになった。カリオペの人生はこれから始まる、というところで終わったからだろうか。しかし、飽くまでも主題は渡米したギリシャ人家族の波乱に満ちた人生なのだから仕方ない。タイトルはインターセックスではなくミドルセックス。最初は似たような意味の言葉かと思っていたが、ミドルセックスは地名である。成る程と納得。

2016/09/26