内容説明
19世紀末の数学界は、ポアンカレやヒルベルトという数理科学の天才を輩出、絶頂を迎えたかに見えた。しかしその屋台骨を揺るがす危機が襲う。大胆不敵な異才カントールの無限集合論が深刻なパラドックスをもたらしたのである。反対派の執拗な攻撃を受け、やがてカントールは精神を病むにいたる…数学界を華々しく彩った天才数学者どうしの確執や愛憎を、人間的興味を中心に描く名作数学史完結。
目次
先生と生徒―ワイエルシュトラスとコワレフスカヤ
完璧な独立人―ブール
方法にまさる人間―エルミート
懐疑する人―クロネッカー
真率な魂―リーマン
第二の算術―クンマーとデーデキント
最後の万能選手―ポアンカレ
失楽園?―カントール
著者等紹介
ベル,E.T.[ベル,E.T.][Bell,Eric Temple]
1883年、スコットランドのアバディーンに生まれる。アメリカに移住後、全米数学者協会会長や全米科学振興協会の副会長などを歴任、各種数学専門誌の編集委員もつとめる。数学関連の著書が多数ある。なお、John Taine名義でSF小説の著書もある。1960年死去
田中勇[タナカイサム]
1930年生。法政大学大学院博士課程修了
銀林浩[ギンバヤシコウ]
1927年生。東京大学理学部数学科卒。明治大学名誉教授
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感想・レビュー
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LUNE MER
19
本書は1930年代のもので、その後の20世紀数学がどれだけ爆発的に発展したのかが逆に分かる。だって、圏論とかホモロジー代数の話が一切出てこなくてビックリしたから。ポアンカレの章が特に目立っていて、三体問題は登場するけど執筆当時にはカオス理論という言葉自体が生まれていない(当然理論としても認識されてない)ので「それだけ?」という感じだし、今ならポアンカレといえばトポロジー、ホモロジーといった単語と切っても切り離せないのにそんな言葉は一切出てこない。(関連する話題がないわけではないが、ぱっと見では分からない)2022/09/27
壱萬参仟縁
7
わりと大き目の活字で助かる。1937年初出。近代解析学の父ワイエルシュトラス(13頁)。彼はインスピレーションという不可解なものを発揮したという(32頁)。教師としての彼は親しみやすかったという(48頁)。目指したい人物像。重要箇所はゴシック太字。ポアンカレは読書(256頁)を楽しみにしていた。確か、岩波文庫にもあった気がする。速読、かつ、記憶力のよさ。僕はすぐ忘却するが(苦笑)。ただ、弱視であったとも。彼は直観の人(264頁)。僕に似たところがある。論文500、著書30以上!(266-7頁)見習いたい。2013/08/30
roughfractus02
6
SF作家の一面を持つ著者の筆致は、数学者達を物語世界に配し、ワイエルシュトラウスの解析学から夭折したリーマン、そして狂気に陥るカントールの悲劇でクライマックスに達する。一方、フェルマーの最終定理に対するクンマー(理想数)、デーデキント(イデアル)、クロネッカー(代数的数体)らの格闘や、数学が純粋化する中でのブールの古典語熱、ポアンカレの読書等応用数学の最後の輝きも描かれる。そして、個々人の偉人伝と19世紀数学の変遷の素描を縫うように、本書では、所属する国を越えた数学研究のネットワークの広がりも示唆される。2017/12/23
fseigojp
6
勘弁してくれー 現代数学 難解2015/07/09
まえぞう
2
確かに翻訳は英語をそのまま訳したような不自然さがありますが、内容は濃いです。戦前の作品ですが、いまでも新しさを感じます。こんな物語を中学か高校の時に読んでいれば、もっと数学に興味がわいたんだろうなあと思います。できれば、江戸時代の日本の数学者、関孝和についてもふれられていればと思いました。2017/03/09
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