内容説明
昭和50年暮、一人の元海軍大将が死んだ。戦後、清貧の生活を貫いたこの人こそ、敗戦前夜、一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭した井上成美だった。開戦前、米内光政・山本五十六とともに日独伊三国軍事同盟に反対し、無謀な対米戦争回避を主張。戦時下にあっては兵学校長として英語教育廃止論を退ける等、時流に抗して将来を見通す全人教育を目指した。狂熱の時代に、さめた知性と合理性を保ち続けた〈意志の人〉の悲劇的な生涯。「山本五十六」「米内光政」につづく海軍提督三部作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
13
日本海軍きっての怜悧かつ犀利な提督として、また日本のあるべき姿を冷厳に思い描き現状を憂い、始まった太平洋戦争の中で日本のあるべき姿を追い求めた井上成美(いのうえしげよし)という海軍軍人の伝記。頑固で石頭な礼儀遂行者、先見の明のある優れた海将、若者の未来を考えた教育者、「ラディカル・リベラリスト」、いろいろな面を保ったこの人物を、好悪をできるだけ交えず、善悪並記して描き出したもの。あえて旧仮名遣いにこだわったところに深い意味を感じます。2020/07/10
mawaji
7
最後の海軍大将にして徹底した合理主義のリベラリストであった井上成美の賛否両論ある人物像が膨大な資料と証言によって浮かび上がってきて圧巻でした。ドイツとの軍事同盟を容認しておきながら対米戦回避を望むという両立せざる二つの国策を爾後の日本の進む道として併せ呑んだ首脳の言葉は、今年の夏のパンデミック下におけるオリンピックに臨む政府やI○Cの発言を思い出してしまった。井上の目指した戦時中の敗戦後を見据えた教育は平時の教育とはもしかしたらそんなに違わず、リベラルアーツの必要性にも通じる人間づくりのように感じました。2021/11/02
Nobuyoshi
0
この本も随分前に読んだ。戦後、三浦半島で英語塾を開いた海軍提督でした。2016/08/19
ほるなうし
0
海軍大将井上成美の伝記。井上の関わったことは日独伊三国同盟に対する反対や終戦交渉、珊瑚海海戦などいろいろあるけれど、それらの事象に関して井上が行ったことの重要性などを敢えて強調することはなく、関係する人間の発言をもとに再構成することに重点が置かれている。井上が行ったことを評価することが目的でないことは明らかで、実際、断定的な評価は一切されていない。2014/05/27
kikizo
0
旧仮名遣いをしていたので、読みづらかった。井上成美という人は 筋の通った凄い人だったんだと思う。2012/03/08
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