内容説明
見合い結婚した津田とお延の夫婦と、津田のかつての恋人清子の三角関係を軸に、エゴイズムのゆくすえを追究した夏目漱石の『明暗』。漱石の死によって未完のまま閉じられた近代小説の最高傑作が74年ぶりに書き継がれた。東京を遠く離れた温泉場で二人きり、久々に対面を果たした津田と清子はどうなるのか?漱石の文体そのままに描く話題の続編、遂に刊行。芸術選奨新人賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
H2A
15
少し前に『明暗』を読んで、人間喜劇の密度の高さに圧倒されだだけに唐突な結末が残念だった。その続篇があることは知っていたのでこれを機に読んだのだがこれはとてもおもしろく読めた。物語の濃密さという点では決して負けていない。夏目漱石とはやはり文体も違うように思うけれども、作品世界をしっかり再創造してくれた。満足しかない。2024/05/29
花束
6
未完で終わった漱石の明暗を、小説家の水村美苗さんが漱石の文体そのままで綴った。が、似てるからこそ違いがはっきりして別物として楽しめた。 全体的に女性目線になった印象、登場人物にも勢いが増して盛り上がった感じは、これはこれで面白かった! 明暗が良いところで未完だっただけに、想像の完成版があるだけで救われました。 女は強くありながらも愛する男の前ではか弱く、少しの遊びは目を瞑れ。男は愛する女の前では真っ直ぐ正直に、自分の女を絶対守り抜け。というようなメッセージを勝手に受け取った。 女の世界はリアルで→2022/02/21
i-miya
4
2006.03.12 津田 清子 津田から逃げる 関 清子の夫 安永 温泉客 貞子 安永の連合 小林 津田の友人 お延(のぶ) お時 下女 岡本 成功者 継子 岡本長女 三好 継子の見合い相手 お秀 津田の妹 堀 お秀の結婚相手 藤井 京都、津田育つ P009 林檎 P012 189 敷島すい始める P015 190 縮緬(ちりめん)の座布団 番頭くる P018 口髭の男 津田さんとおっしゃるの 安永・・・浜の生糸屋・・・上客 2006/03/16
風鈴
3
夏目漱石の絶筆を著者なりに解釈して魅せてくれたお話。後書きが清々しくて気持ちいい。現代の人が書いたので、読みやすい。一息で読んでしまった。エゴイズムのエゴイズムたるやもすごいけど、それでぶつかり合ってるのがまたすごい。わたし、避けて違う土俵に移動しちゃうタイプなので。この後どうなったのかが気になるなぁ…2021/11/16
NY
3
津田の心理描写はあまりに見事。男の狡さが微に入り細に入り描かれていて感心するとともに、自分の恋愛を思い出して身につまされる思いでした。漱石オリジナルを生かした登場人物の配置も絶妙。 漱石の文体そのままに、とは言うものの本質的な連続性はそこまで感じなかったです。むしろ、人間ドラマとしては、漱石はここまで率直に生き生きと描けなかったと思います。「則天去私」は最後にお延が体現した感じでしょうか。津田が本当に自分の小ささをどこまで自覚したかは定かではないですが、ハッピーエンドを感じさせるエンディングも良いです。2017/07/30
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