出版社内容情報
アメリカ在郷軍人の圧力で中止となった、スミソニアン博物館での原爆写真展を再現。ここに収められた57点の写真は、J・オダネル氏が撮影し、50年間トランクに封印されたまま公開されなかった広島・長崎の真実の記録である。日本各地で写真展を開催。
米従軍カメラマンの非公式記録
内容説明
1990年からアメリカで、ついで1992年から日本各地で彼の写真展は開催され、話題を集める。しかし、この夏に予定されていたワシントンのスミソニアン博物館での原爆写真展は、すでに報道されたように在郷軍人の圧力でキャンセルされた。ここにおさめられた57点の写真は、スミソニアンではついに展示されなかった真実の記録である。
目次
戦争は終わった!そして日本へ。
「君の任務は上陸の模様をカメラにおさめることだ」
水平線に蟻のような黒い点々が現れ始めた。
あたりの空気はこげ臭く、空は淡い灰色にもやっていた。
その晩、招待を受けて市長宅を訪れた。
おもしろそうなものを見つけてはシャッターを切った。
「墜落した飛行士も気の毒な死者のひとりですよ」
福岡の海兵隊の新しい司令部ができることになった。
奇妙な老人の言葉を忘れずに。
なんとか現像してみよう。〔ほか〕
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
115
「死ななければならない理由なんて何もなかったのに。私はアメリカを許しますが、忘れてくれといわれてもそれは無理です。」あの老人の姿は私の幼少の頃見た老人の姿です。戦闘機の山を処分する写真はこんな程度のものでよく向かって行ったものだ・・『焼き場に立つ少年』の写真は誰もが見たことがあると思う。ただただ言葉もない。ずっと忘れてはいけない記憶。細くても繋いでいかなければならない事実。この写真集も教えてくれている。2017/07/26
しいたけ
113
どんなに時間をおいても、この感情を上手にレビューに込められる気がしない。白黒のこの写真に、勝手に色をつけることはできないように。惨虐は惨虐なまま。哀しみは哀しみのまま。アメリカ海兵隊のカメラマン、ジョー・オダネルが敗戦直後の日本の被害状況を記録する命をうけ撮った写真。悲惨な写真は勿論多い。その中に、日本人の尊ぶべき姿も写しとられている。私物のカメラに持ち替え写真を撮った彼の敬意がそこにある。帰還した彼は悪夢から逃れたいとネガをトランクにしまう。原爆症を経て45年後に開けたトランク。彼の回想録も素晴らしい。2018/08/08
はつばあば
70
言葉もなく爺様と見入る。この本が届いた時ご近所の奥様が、うちのお父さん小さい頃の戦争の話をよくしはるねんと。?昭和10年生まれで戦争の話?お父様は山口の出とか。警報がなって近い防空壕に入ろうとしたらここの防空壕ではないだろうと入れてもらえなかったとか。戦争の悲惨さはヒロシマ・長崎で知っているはずなのにベトナム・イランイラク戦争へと益々酷くなった。後悔することも懺悔することもなく正義という名のの御旗を振りかざして、たった一度しか経験できないヒトの人生を奪う。戦争に駆り出されるのは庶民。殺されるのも庶民。2017/07/27
GAKU
69
「焼き場に立つ少年」の1枚だけでも多くの人に見て欲しい。戦争の悲惨さがこの1枚に集約されている。2017/08/04
あじ
57
写真の中から無言で見つめる人々、焼け野原に写るのは目に見えない放射線。声なき声が渦となり私を飲み込む。撮影したのはアメリカ従軍カメラマンのオダネル氏。終戦直後の広島、長崎、福岡を歩き記録した。私用カメラで撮影したネガを50年間トランクに封印していたが、友人の協力で公開に至った。「国に戻ったら日本の有り様をあたなは語りつながなくてはなりません」長崎で出会った老人の言葉が蘇る。爆撃で聴力を失った少女、苦しみながら「殺して」と懇願する被爆者。焼き場に立つ少年。彼は己の無力さを噛み締める事しか出来なかった。→続く2014/08/19