感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
93
ヒトラーがユダヤ人を打倒とすべく考えた諸要素とは議会制民主主義、拝金思想、インターナショナリズム、マルクス主義、ソヴィエトのボルシェヴィズム等の一切がユダヤ人の陰謀から派生していると考えていたとのこと、全編を通してアーリア人種至上主義も非常に強く見える。ただ言えることは十一章でまたまた宣伝に対する章が書かれていて、自身の一番の強みを惜しげもなく書いてくれている。2016/05/21
Willie the Wildcat
41
「民族」といいつつ、大衆を烏合の衆と見なし、巧みに扇動。「血」への拘りも、政治手段とは言え、(アメリカ人とのハーフの甥と姪を持つ私としては)嫌悪感しかない。(学問的知識より)健康と健全な精神に重きを置く姿勢は一見気をひくも、問題は”健康”と”健全”の定義。一方、当時他政党も民族主義を唱えるようになるなど、時勢のうねりの怖さを嫌でも感じさせる。マスコミの在り方も問うべきだが、選挙民としての見識・判断・行動も、改めて考えさせられる。2015/01/21
さきん
39
やっと下巻も読めた。党をどう盛り上げてくかという内容と後半は、世界情勢をユダヤ陰謀と絡めて分析している。ファッション、プロパカンダ、マスコミ、義勇隊、演説、演劇など、今でも大統領選や芸能界に至るまで、広く通用する具体的な手法が見れた。フランスは大国ドイツは認めない、イギリスと組んでロシアに対抗するなど、ランドパワー重視。ドイツもバイエルンとプロイセンで随分文化が違うが、そこを分裂させない共通の敵を並べ、同じ言語でまとめ、第三の道を説くことによって分裂を防いでいる。2022/03/23
Miyoshi Hirotaka
39
柔道は日露戦争を期に国際化。フランスの作家にヒントを与え、アルセーヌ・ルパンは柔道の達人として設定された。敵国だったロシアにも早い段階で伝わったが、再度対立が深まった1930年代には敵国由来であることを隠すためサンボと名を変えた。一方、「わが闘争」が書かれた1920年代にはヨーロッパ全域に普及していたようで、「突撃隊の訓練には射撃よりも柔道とボクシングが適している」と書いてある。わが国が一度は廃棄した武術が体系化され、新たな価値となり、どのような経由で伝播し、ヒトラーの知るところとなったか興味が尽きない。2016/09/24
かわうそ
38
「朝は——日中ですらもそうだが——人間の意志力は、自分と異なった意図や異なった意見を強制しようとす試みに対しては、このうえないエネルギーで抵抗するように思える。これに対して晩には、それらより強い意志の支配力に、もっと容易に屈服するのである。というのはこういう集会はすべて、たしかに2種類の対立する力の格闘であるからだ。」p137 ヒトラーは戦争遂行の才能はなかったものの、わが闘争の下巻を読めば、演説家としてのヒトラーはすごぶる天才であったことがわかります。2022/03/04