出版社内容情報
福沢の学問観の真の革命性を説く「福沢における「実学」の展開」や,多面的で変幻自在な福沢の発言の根底にある思考方法を解明した「福沢諭吉の哲学」など,丸山眞男(1914-96)の,福沢についての論考7篇を収録.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
6 - hey
9
時代のため、あえてぶれた所と、福沢もきづいていないブレを把握しようとした本。「惑溺」の考察もおもしろい。昭和の思想を知るために、福沢諭吉にまでさかのぼった丸山先生は本当にすごい。2013/05/21
Happy Like a Honeybee
8
宇宙の間に我が地球の存在する大海に、浮べる芥子の一粒と云うも中々おろかなり。 福沢諭吉研究で知られる丸山眞男氏の論文などがメイン。 儒教批判や文明開化、明治維新の前後における福沢と周囲の状況を研究。惑溺とは人間精神の懶惰。 電光石火の瞬間、偶然この世に呼吸眠食し、喜怒哀楽の一夢中、忽ち消えて痕なきのみ。 著名な物理学者が言うように、人類は100年で滅亡するのか?2017/09/15
KAZOO
8
丸山先生の福澤諭吉関連の書物は、岩波新書の「「文明論の概略」を読む」をすでに読んでいますが、この文庫は福澤諭吉についての論文が7つ収められています。とくにこの表題となっている評論が中心を占めていますが、比較的わかりやすく感じました。2014/03/31
denz
5
福沢の言論的活動の底流に一貫して流れている、彼の認識・判断の方法を抽出し、その意味を分析した丸山の福沢論の主なものを収録。儒教そのものではなく儒教を使って科学的認識や実験精神を拒むものを批判する一方で、西洋崇拝も同様に「惑溺」として批判する主体的な強靭な精神を福沢の中にみる。国際的闘争においていかに日本の国家的独立を確保するかが福沢の最大の目的だが、その一方で人生は戯れにすぎないともいう。よく誤解されるが「立国は私なり、公に非ざるなり」は、国家の独立すらも「惑溺」だが、「今」は意義があるという考えだ。2011/12/31
politics
4
丸山による福沢読解の論文集。表題作および「実学」論文は言論活動における認識・判断方法(哲学)を分析しており、この点は多くの福沢研究が出される中で矢張り異彩を放つ論文群だろう。私自身は福沢がその初期に多用した「惑溺」を分析した論文が興味深く、その当時の状況や環境等によって言葉を巧みに使用している福沢の手法がよく理解できた。講演原稿を元にしたものは平易で理解しやすく、丸山が福沢をどう読解したのか、政治思想の方法論のエッセンスも含まれた大変優れた論文集だと感じる。2023/08/03