出版社内容情報
著者が好んで用いた箴言の形でなく,論文の体裁で書かれた著作で,ニーチェの思想の構造,殊にその道徳批判およびこれに連関する独自の価値思想の理論的な筋道を捉えるのに最も役立つものである.「善と悪・よいとわるい」,「負い目・良心の疾しさ・その他」,「禁欲主義的理想は何を意味するか」の三編から成る.
内容説明
ニーチェの思想の構造、とりわけその道徳批判およびこれに関連する独自の価値思想の理論的な筋道をとらえるのに最も役立つ一書。ニーチェ自身、自分の思想の世界に分け入ろうとする人びとに本書と『善悪の彼岸』の2つの著書から始めるようにと勧めている。「善と悪・よいとわるい」「負い目・良心の疚しさ・その他」など3篇から成る。
目次
第1論文 「善と悪」・「よいとわるい」
第2論文 「負い目」・「良心の疚しさ」・その他
第3論文 禁欲主義的理想は何を意味するか
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
58
テレビドラマや道徳の教科書などでの「幸せな家族像」という定義を知るたびに親の気まぐれでよく、怒鳴られたりした家庭と比べてしまい、その定義から漂う「違う家庭は可哀想に・・・」という見方に惨めになり、その概念を生み出した奴を縊り殺したくて仕方なかった。自分が救われたいから他人を救う。キリスト教やプラトンの博愛精神はいつしか義務化した善意の押し付け合いになった。お節介じみた倫理の押し付け合いは既定の概念を壊し、新たに生み出す負の感情から来る意志を抑圧する。しかし、抑圧されてきた意志を覗けば虚無からの絶望しかない2014/09/08
Y2K☮
42
とかく己を弱い善人と定義づけ(戦後左翼にありがち)、強者への妬み=ルサンチマンを正義と混同し、彼らの断罪に密かな悦びを覚える。現実が満たされぬからそこで強者の味を体験する。道徳という名のVR。ストイックという評への欲望。我が身を省みてもその罠と無縁ではない。まずは愚かで淫らな生身の己を否定しない。その上で進むべき正しい道を模索する。誤りに気づけば直す。社会からの断絶も孤独を恐れるが故の馴れ合いも避ける。強者の傲慢とも弱者の反感とも無縁でいよう。善にも悪にも囚われぬ、公と私のバランスを考慮する一庶民でいい。2018/03/10
壱萬弐仟縁
41
幸福は本質的に麻酔・昏迷・安静・平和・安息日・気伸ばし・大の字になること(49頁)。すべての芸術家は、大いなる精神的緊張と準備の状態にある時の同衾(どうきん、同床を共に)がいかに有害な結果を来たすかを知っている(179頁)。禁欲生活は一つの自己矛盾で比類なき《反感》が支配している。本能と権力意志の《反感》(191頁)。科学はあらゆる点において、まず一つの価値理想を、一つの価値創造的な力を必要とする。この力への 奉仕(傍点) によって初めて科学は自己自身を 信じうる(傍点) ようになる(254頁)。2016/01/11
さきん
30
道徳をどのように考えるかを分かりやすく解説。キリスト教も含めて人びとの道徳と正しいとされる行為、行動を規定してきたのは、良心の疚しさ、虚無への願望であると説明。大まかには納得することが多かった。2016/12/01
かわうそ
28
貴族的な価値観はまずは良いものつまり、自己を芽生えとするが、僧主的価値観では外的な刺激、悪を前提とし初めて自らを良いものであるとする。貴族的な価値観は自主的なものであり、僧主的価値観は受動的であるということである。ニーチェはこの僧主的価値観によって善悪の転倒が起こり、それが歴史を後退させてきたという。つまり、ユダヤ教、キリスト教を徹底的に叩きのめそうという試みだ。ツァラトゥストラでも書かれているようにニーチェは不滅の善悪など存在しないという。常に創造し、破壊を続けなければならないのだ。2022/09/29