出版社内容情報
狩で森に迷いこんだ王子ゴローは,泉の傍で泣いているメリザンドを見つけ妻とした.ゴローの弟ペレアスもまたメリザンドに惹かれる.彼らは互いの心に,二人だけの夢が宿っているのに気づくのだった.いらだつゴロー…….メーテルランク(一八六二‐一九四九)のこの戯曲に,ドビュッシーは美しい音を与えてオペラ化した.文庫初の対訳.
内容説明
狩で森に迷いこんだ王子ゴローは、泉の傍で泣いているメリザンドを見つけ、妻とした。ゴローの弟のペレアスもまたメリザンドに惹かれる。彼らは互いの心に、二人だけの夢が宿っているのに気づくのだった。いらだつゴロー…。メーテルランク(1862‐1949)のこの戯曲に、ドビュッシーは美しい音を与えてオペラ化した。文庫初の対訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
118
王子ゴローは泉の傍で泣いていたメリザンドを妻にするが、弟ペレアスと彼女の接近に苛立つ。主軸となるペレアスとメリザンドのやりとりは至って寡黙で、言葉が二人の控えめな身振りの影に潜むように口ごもる。説明を補うのがアルケルやゴローの長台詞であり、小道具や動物といった背景を執拗に用いた心象表現が作品の幻想性を高めている。水の精を思わせるメリザンドは主体性を持つことなく、兄弟の欲望や問いを悉く反射する。彼女を通して提示される真実の本質、それは水の底で光りつつも決して掬い上げられることのない宝のようなものなのだろう。2022/01/26
松本直哉
35
ゴローが tu で呼んでもメリザンドは vous でしか答えず、かみ合わない二人だが、たった一度彼女が tu で呼ぶのは死の床で、許しを乞うゴローに、「ええ、許します」Oui, oui, je te pardonne. と答えるところだ。たった一言の千鈞の重み。一方、はじめ vous で呼び合うペレアスとメリザンドが互いに tu に変るのは塔の場面。指輪を探して昏い水の底に注いでいた視線はここで上を向き、上から光の束のようなメリザンドの髪が降り注ぎ、星々は明るく輝く。下から上の、暗から明の劇的な変化。2021/03/10
アナーキー靴下
23
フォーレの同名組曲シシリエンヌが大好きで読んだ思い出の本を再読。あらすじで言えばペレアスと、兄の妻であるメリザンドとの悲恋、という物語だが、そんなふうに言葉にした途端に壊れてしまうような、ただただ美しい戯曲。一目で強く惹かれ合う二人であるが、何もかも曖昧なまま、無邪気に寄り添うような時間が過ぎてゆく。曖昧だからこそ、塔のシーンは息を呑むほどに美しく官能的。戯曲の定型的表現とは思うが、常に予感を感じさせ、悲劇に手繰り寄せる罠が張り巡らされたような展開も素敵。メーテルランクは「青い鳥」作者。いつか読もう。2020/10/17
松本直哉
15
完結しない言葉。宙吊りにされた言葉。浮遊する言葉。確実なものは何一つなく。夢の中でのように、非現実にふるまう登場人物たち。何一つ明かされない、メリザンドの生い立ち。森の奥の泉での、途切れがちな会話。劇ではなく、まるで詩のように、あるいは音楽のように、読まれる。2013/03/27
美東
13
ドビュッシーによってオペラ化された第4幕第3場 イニョルドの「どうして羊さんたちは静かになったの?」との問いに羊飼いの答え「羊小屋へ帰る道ではなくなったからですよ。」~ここに至るまでの羊の鳴き声を模した管楽器のもの悲しさ~あれはクラリネットかオーボエか、はたまたコーラングレか定かではないけれど~ほんとにもの悲しい。
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