内容説明
何度も手痛く裏切られたけれど、それでも愛していた。
舞台は昭和40年代、港町にある、小さな古いアパート。
幸せに暮らせるはずの四人家族だったが、父は長男を、そして母を遠ざけるようになる。
一体何が起きたのか。
家族は、どうして壊れてしまったのか。
ただ独り残された「私」による、秘められらた過去への旅が始まる。
謎を解き明かし、失われた家族をもう一度取り戻すために。
『兄の終い』『全員悪人』の著者が綴る、胸を打つ実話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
72
家族って、親子って何だろうと考えてしまう。以前読んだ村井さんのエッセイは、お子さんを中心とした現在の家族のこと、そしてお兄さんの突然の訃報と住居や遺品などの整理、さらにはご自身の闘病などについて書かれたものだった。でも、この『家族』は赤裸々で壮絶で、村井さんのバックボーンであり鎮魂の思いもあり、とにかく絞り出すような思いで来し方を記してあった。家族の数だけ家族の姿形があるのだろう。2022/04/15
よつば🍀
72
家族という集合体はなんて厄介なんだろう。昭和のノスタルジー香る表紙のモノクロ写真。この微笑ましい写真からは想像も付かない村井さん一家の凄絶な家族の歴史が綴られている。父親と発達障害の様な特性を持つ兄との相容れない関係性が辛い。我が子との約束より異性を優先し、本音が全く見えず曖昧な言動を繰り返す母親も嫌だ。夫婦は他人でも子供にとって両親は絶対の信頼を寄せる対象。兄妹はどんなにか苦しかった事だろう。細くて浅いひび割れから大きく亀裂が入り壊れていく家族があまりにも切なかった。四人其々の孤独が胸に迫って来る読後。2022/02/21
ma-bo
68
疎遠になっていた兄が亡くなったと、警察からの電話で知らされてからの怒涛の数日間を綴った実話を綴った「兄の終い」を以前読んで、村井さんの著書は2作目。今作はそんな兄だけでなく、両親そして家族との関わりを回想していく。帯にどうして壊れたのか…とある。様々な問題がありながら一緒に住んでいた頃より、独立して物理的な距離が、そのまま精神的な家族間の距離に繋がってしまっているのが辛い。 作品の特設サイトで、村井さんは状況や環境が違えば、早い時期に誤解を解いていれば、こじれる前に話し合っていれば‥と家族だからこそ難しい2022/03/05
pohcho
58
「兄の終い」につながる村井さんの家族の話。今の言葉で言うと、ご両親は毒親と言えるかもしれないし、お兄さんは発達障害なのかもしれない。でも、そんな言葉のなかった昭和の時代、気難しい父と忙しく働く母と乱暴だけど人好きのする兄と病弱でしっかり者の妹の、どこにでもいる普通の四人家族だったのかもしれない。幸福そうな表紙の写真が切ない。 辛く苦しかった家族の記録。皆亡くなってしまった今、村井さんが書き残したくなった気持ちがわかる気がする。2022/04/15
油すまし
50
村井理子さん3冊目。読み始めると止められないのは今回も同じ。家族って難しい。でもやっぱり家族。「兄ちゃんが本気出したら、誰にもかなわない。それほど兄ちゃんはすごいんだ。兄ちゃんの本当の力を、私は誰よりも知っている。でも、それを兄には伝えなかった。伝えていればよかった」。この家族だったからの今の村井理子さんで、こうして読者に生きる力をくれているのですから、辛いこと多かったけれど素敵なご家族だったのだと思います。一番理解に苦しむのはお母さんだったけれど、本代をいくらでも出してくれたお母さんの存在もまた大きい。2022/05/10