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洋書 The Metal Monster (Lost World-Lost Race Classics") 〈7〉

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表紙の絵がないのは、受注印刷による販売形式のためだ。だから新刊のような出来上がりで送られてきた。翻訳は1969年出版の『金属モンスター』（早川SFシリーズ）。原著は1920年に米国のSF雑誌に掲載されている。　
　A・メリットの長編は、どれも名作といえるほどの内容ではないが、私にとっての傑作『ムーン・プール』の主人公が再登場するので読みたかった一冊。古書を探していたがこの出版形式で入手できた。
　今回の舞台は、中央アジアの奥地。ジェームズ・ヒルトンの『失われた地平線』に先行する設定だが、物語は、「神秘」を凌駕するような方向へ進んでいく。
　新種の植物を探し求めるグッドウィン博士一行は、偶然に行きついた人知れない谷で、謎の美女と彼女をとりまく金属の生命体と遭遇する。表題にある「金属の怪物」は単数形。つまり、登場する金属の巨人は一体であるが、縦横無尽の動きをする。
　この秘境で、煌めく金属が意志があるように動き回る想像を絶する展開を、彼らは目撃することになる。古代の巨石文明の圧倒と静寂に、20世紀初頭に具現化しつつあった機械化の躍動感を投入した前代未聞の設定だ。そして、主人公たちは、謎の女王の復讐の戦いに巻き込まれていく。当時の読者にとっては、第一次世界大戦の破壊を巨大な金属の力で再現したような印象だっただろう。
　血湧き肉躍る一大活劇絵巻になりそうな構想なのだが、残念ながらSFとしての評価は高くないようだ。翻訳も、早川書房から文庫化されていない。（『ムーン・プール』も翻訳は再刊されていない）
　不評の理由は、ご都合主義の展開と冗長な筆致だ。例えば、くり返される「急いで朝食を済ませた」というような場面。意味もない文章で、緊張感が途切れてしまう。そして、本来、英雄的な働きをすべき博士も（インディー・ジョーンズのように）、一人称で登場するので、単なる報告者のような距離をおいた位置に立たざるを得ない。
　しかしながら、この「緩み」がA・メリットの個性であり、魅力でもあると思う。下町の食堂で、雑多な盛りつけの定食を楽しむ感覚だ。文学の美食には程遠いが、想像力という飢えを満たすのにはちょうどいい味つけだ。年に何冊かはこのような小説を楽しみたいと思う。

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