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和書早稲田文学〈２０１４年秋号〉特集：新世代の幻想文学

少々古い季刊誌だが、「新世代の幻想文学…

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タグ幻想文学、マルケス、翻訳

今年は、意識的に新書での読書も増やしていこうと思っている。2020年８月に『探求型読書』（編集工学研究所、クロスメディア・パブリッシング）を読んだ際に、「新書には上手な情報設計がある」旨の記載を目にしたのがきっかけだ。その高さと幅は、書棚で書籍の連鎖を可視化するために有益であると、改めて思ったからでもある。隙間を埋めるということである。
　今年の一冊目は、岩波新書。表紙からは、二名の著者による共著、あるいは対談のように見えるが、加藤周一の問い対し、丸山真男が答えるという構成になっている。
　表題からも分かるように、翻訳文化の変遷というよりも、明治維新の日本の近代化の歴史を、外国語を日本語に変換するという当時の取り組みをとおして再確認しようとする内容になっている。社会問題化するカタカナの乱用を再考する際に、遡及して理解しておくべき文明開化時の思想的な葛藤が読み取れる。
　幕末の開国以来、庶民にとっても、諸外国発信の情報や知識を理解する、あるいは文学作品を味わう上で、翻訳は不可欠だった。名訳に巡り合うと「横文字は不要で日本語だけで十分」（出口裕之『奇譚庭園　澁澤龍彦のいる風景』、河出書房新社）という心境になる。
　一方、矛先は限定されてはいるが「悪訳は文化的犯罪」（高山宏『表象の芸術工学』工作舎）という意見もある。個人的には、義務教育で学ぶ英語については、荒俣宏が中学生時代に諭されたように「原書で行け」（『稀書自慢神の極楽』中公文庫）が妥当なのだろうと思う。
　明治時代の文部大臣、森有礼が言い出した「日本語を廃止し英語を国語にする」という政策案は行き過ぎだと思うが、国力としての英語力向上を必須と位置づけるのであれば、英語文献からの安易な翻訳の普及は、逆効果のように感じている。
　本書の出版経緯は、日本近代思想大系の一冊である『翻訳の思想』の編集過程で記録された問答であるという。歴史的な分類ではあるが、今回の読書は、機械翻訳の精度が上がる中、日本語と翻訳の将来を考える機会にもなった。

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