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洋書 Thus Spoke Zarathustra

ツァラトゥストラとの出会いは鮮明に記憶…

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ツァラトゥストラとの出会いは鮮明に記憶している。中学生の時に映画館で見た『2001年宇宙の旅』の音楽である。当時は、ニーチェという人物は知らなかった。
　それから、書店や古書店で見かけるようになり、この哲学者が書いた一冊に『ツァラトゥストラはこう言った』という本があるのに気づいた次第である。
　定年退職を機に余裕がでた読書時間で、遅ればせながら少しずつ哲学書を読み始めている。2020年の４月に読んだ『悲劇の誕生』（岩波文庫）が初めてのニーチェだった。
　この作者は、一般的に「哲学者」そして著作は「哲学書」と分類されているが、最初の読書で、この定評が崩れ去った。ニーチェは文芸批評家である。これが私の認識として定着した。
　この視点で、本書を読むと、さらにこの理解が深まると同時に、小説家としての姿も浮かび上がってきた。『ツァラトゥストラはこう言った』は、小説あるいは長編の散文詩ということが実感できたのだ。内容はともかく、ドイツ文学の奇作として楽しんだ。特に、第二部のThe　Night　Songは気に入った。
　奇なるという背景として、翻訳としての日本語版の多さもある。漫画版も含めると、紀伊國屋ウェブストアで10種類くらいが入手できることが検索できる。どれを選んだいいのか手がかりがなかったので、福袋的な年頭の洋書のバーゲンセールに乗じて新宿店にあったペンギン・ブックス版を購入した次第だ。
　抽象的な世界観に夢中になったものの、気になる点がいくつかあった。「神は死んだ」は有名だが、英語版では一神教の「神」だったり、普通名詞として複数形で表記されたりする場面がある。ゾロアスター教の影響が見え隠れする。また、「超人」は　the　Supermanとして登場するが、the　Sublime　Manあるいはthe　Higher　Manもでてくる。女性の姿が見えない時代を反映している。
　最後に、突然とライオンが一頭、鳩と共に登場する。『ナルニア国物語』（ＣＳルイス）を読んでいれば、この猛獣がキリストの化身だと容易に想像がつく。この世から抹殺された創造主の使いが、姿を変えて迷うツァラトゥストラを導こうとしているかのように。この混乱は、ニーチェの精神の反映だろう。
　このように、この作品を『2022年ニーチェ内宇宙の旅』として永遠に記憶せよと語られた。

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