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洋書 Beyond Infinity : An expedition to the outer limits of the mathematical universe

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本書は邦訳が出ていないようなので表題を直訳すると『無限の彼方』となる。ＳＦ的な雰囲気だが、副題には「数学の外側の境界への探検」とあるので、数学的に、「無限」という概念あるいは事象を解き明かさそうとする科学的な読み物である。ただし、The　Outer　Limitsは、1960年代の米国の『ウルトラＱ』的なＴＶ番組名なので、「摩訶不思議」の雰囲気はどの章からも漂ってくる。
　といっても、内容はともかく、筆致は、難解な学術書のそれではなく、また怪奇小説のそれでもない。児童にこの不可解な単語の定義を理解させようとする優しい家庭教師のお姉さんの視点で綴られている。英文も平易で読みやすい。
　「無限」という日常語ではあるものの抽象的なことばが意味することを、たとえ話や簡単な数式、図等を効果的に随所に使って説明しているので、二部構成の本書を読み終えるころには、分かったような気分になる。要するに∞よりはπのほうが無限の記号として相応しいと思えてくるのだ。メビウスの環が最後に登場するのは、著者自身の幼少期の自宅での姉妹での戯れの記憶の再現でもある。
　「無限」は、数学ばかりでなく、工学や美術の中にも封じ込められているということだ。「美は境界上に存在する」という一文が印象的だ。
　ところで、このinfinityという概念は、ロボット作家の第一人者、アイザック・アシモフがThe　End　of　Eternity（『永遠の終り』）の結末で用意していた仕掛けでもある。（コメント参照）無限に続くあるいは分割できる「数字」の背景にある時空間の拡がりと密度を、日常の刹那的な時間の中で考えそして楽しむということ自体が「永遠」を経験することなのかもしれない。
　なお、著者自身が本書の内容を説明する動画もインターネット上で閲覧できる。

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