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洋書 The Kraken Wakes : Classic Science Fiction

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私の歩むべき人生を最初に示したくれたＳＦ『海竜目覚める』（早川ＳＦシリーズで1969年の11月に読了）の原書。星新一が和訳した翻訳は、その後早川文庫に収録されたが、今な入手困難のようだ。
　中学校へ提出する読書感想文のための本を探していた時に、小さな書店で偶然見つけたのが早川ＳＦシリーズの一冊だった。その遭遇の瞬間を今でも鮮明に記憶している。なにしろ、この本を読んで以来、人が変わったように小説を読み始めたのだから。
　だから原書も特別な想いを抱いて読んだ。表題のとおり海から竜が侵略してくるという内容だが、その怪物は隕石で宇宙から飛来した生命体だ。原書のKrakenは北欧の伝説に出てくる巨大な海の魔物。英語圏の人々にはなじみのある怪物だ。小説では、「その語り継がれてきた化け物が、今になって目を覚ます」という主旨の題名になっている。
　世界各地で目撃される海に落下する赤い光球。増加する船舶の遭難事故。深海調査艇が消息を絶つ直前に目撃する円形状の生物。北極と南極の氷が解けて海水面が上昇する。
　この宇宙からの侵略を日本人科学者が考案した「超高波」で阻止するという結末で、恐怖が安堵に変容する。それまで、主人公の見聞をとおして一人称で緊迫感を盛り上げる筆致は絶妙である。
　なお、星新一が和訳した「日本人」は、原書ではJapと表記されている。この本が発表された1953年を考えると、ノルマンディー上陸作戦に参加した著者の意識では、戦後日本の復興は「身のほどしらずで叩かれたくせに、最近はあっぱれ」だったのだろう。「ソニーが小型トランジスターラジオを米国で売り出したのは1955年だった」（『Made　in　Japan』Akio　Morita）ことを考えると、著者には先見の明があったということだろう。
　中学生にとっては、星新一の訳のおかげで、すなおに喜べる結末だった。

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