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洋書 A Brief History of Timekeeping : The Science of Marking Time, from Stonehenge to Atomic Clocks

先ず、表題のTimekeepingが赤…

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先ず、表題のTimekeepingが赤字表記になっているところに目がいった。ホーキング博士のベストセラーA　Brief　History　of　Time（1988年出版、1989年5月読了）との違いを意識させる意図とともに、この名詞の意味を強調するためだろうと推測した。
　購入したのは、　Books　Kinokuniya　Tokyoの年頭の洋書バーゲンの時。このような印象に惹かれ躊躇なく買い物かごへ入れた。
　timekeepingはtimeとkeepingの合成語だが、語尾のingが曲者だ。辞書的には動名詞なのだろうが、現在進行形に必要な現在分詞のingにも聞こえてくる。つまり、機械時計が時を刻む歯車の音を暗示しているようでもある。（『理系学生・エンジニアのためのやり直し英語』コメント参照）また、時間に束縛される管理社会においては、「決められた時刻に予定の仕事や移動を完了させる能力」という美徳の意味にもなる。
　このような複数の視点で、著者は、天体観測に基づく古代文明の暦から、世界標準時の制定、科学技術の革新と共に進歩した時計製造の技術等を、歴史を紐解きながら解説してくれている。最終章は「時間の未来」である。果たして、セシウム原子時計の精度を超える時計が開発される日が来るのだろうか。
　関連事項の補足説明は、フォントを変えて挿入されていて読みの妨げになりそうなので、本編の読了後にまとめて読むことにした。ある意味、重力による時空間の歪みを具体化した体裁でもある。
　伝統的な壁時計や腕時計が示してきた「円環する時間」が、デジタル表示により、見かけ上の調和の奥底に潜むパイの次元へと吸い込まれ、量子の波動という極短の変化を可視化する様は、まさしく、ダリが『記憶の固執』で描いた「溶ける時計」の異世界そのものである。
　本書は、基本的に科学技術史の本だが、必然的に、計測される「時間」の不思議さを改めて考えさせられる哲学書にもなっていると感じた。
　邦訳は出ていない。６月10日（時の記念日）に出版されることを期待したい。

タグ暦、時計、時間

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