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洋書 Esoteric Buddhism - 1885 Annotated Edition

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アルフレッド・パーシー・シネットがThe　Occult　World（コメント参照）の次に書いた本。昨年、同時に購入した。題名は、日本語にすると「密教」になるが、それはあくまでも英和辞書レベルの日本語への置き換えだ。
　形容詞のesotericの基本的な意味は「小集団に限定された知識が求められること」であり、「その小集団に入るには儀式を通過しなければならない」という含みもある。公にされない教えに関わることなので、日本語では「密」の漢字をあてたのだろう。
　著者は、神智学協会の設立を目の当たりにして、古代から伝わる神秘思想や媒介を「オカルト」というくくりでまとめた人物だ。その19世紀の英国人が、インドでの見聞をもとに、西洋の科学思想を補完するであろう仏教の根源と奥深さに近づこうとしたのが本書である。
　教科書的な視点で英国人が語る「密教」の解説書ではない。あくまでも、神智学の視点が記述の枠組みとなっている。従って、日本の仏教の源へと遡及しようとした試みは、煙に巻かれた感を拭えない。しかしながら、浅学な読者にとっては大きな気づきがあった。
　大乗仏教と小乗仏教の基本的な差は理解してきたつもりだが、今まで「乗」の漢字の由来を意識したことはなかった。本書では、vehicleという単語が、精神の覚醒あるいは昇華を導く媒体として使われている。このことばの日常的な意味が「乗り物」なので、ここで「乗」の漢字と結びついた。
　要するに、大乗仏教は浄土を目指すカーフェリー（vehicleは広義の意味で交通手段としての船舶も含む）なのだ。このイメージができたことは、これから本格的に、読書をとおし日本仏教をより深く理解していこうとするのに有益だと思う。著名な僧侶を乗客に、宗派や教義を、車両の種類にたとえていこうと思う。
　イギリス人でありながら、神智学的な思考から円環する時間を強く意識している点も興味深い。ここで、仏教とオカルトが重なりあうのだろう。ダーウィンの『種の起源』を補填する視点で、人間の進化をモナドの螺旋状の上昇として描いている。
　古代からの「秘儀」を垣間見た読書になった。

タグ密教、神智学、進化論

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