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洋書 Under a White Sky : The Nature of the Future

本書を購入したのは、ビル・ゲイツが20…

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本書を購入したのは、ビル・ゲイツが2021年の夏に読むべき５冊の一冊として推薦しているのを、インターネット上の動画で見たからだ。いい新刊を探すには、ゲイツの紹介は有効だ。裕福で広い家に住むこの多読家は、高価な新刊のハードカバーの購入を躊躇しない。
　私が入手したのは、廉価なソフトカバー。この柔らかさは手に優しい。しかしながら、本書の内容は手厳しい。著者が注視してきたのは、環境破壊問題。
　冒頭の視線は「鯉」という観賞用の淡水魚に注がれる。「優雅さ」の裏になる外来種としての「破壊性」を浮き彫りにしていく。
　サンゴ礁の保護等から、視野は拡大し、geoengineeringという技術にたどり着く。20世紀を築いた「工学」の発想を、傷み始めた環境の修復に応用しようとする発想だ。火星の気候を地球化するterraformingを真剣に考えている科学者等もいるが、他の惑星を快適な居住地に改修する前に、自分達の故郷の環境を悪化させないようにしようという取り組みは、真っ当である。
　しかしながら悪影響も心配だ。ある物理学者は、成層圏にダイヤモンドの小さな粒を放出することを考えているという。地球を冷やすためである。この治療法は、発熱時に冷水につかり体温を下げるという手当てと同じ発想に基づいている。日本の台風被害をなくすために太平洋上に油を浮かべ海水の蒸発を防ぐという乱暴な計画を思い出した。子どもの頃にどこかで読んだか、聞いた記憶がよみがえる。（伊勢湾台風の後か）
　題名の「空」には、skyとは別にfirmamentという英語もある。天地創造で神が作った大空である。そこに含まれたfirmから分かるように、大地を覆う盤石の「宙」の意味だ。著者は、この文語を使わず日常語としてのskyを表題にしたが、a　skyという曖昧な表記。しかも、白である。
　21世紀後半に向けて、この空にどんな着色をしていくのかを決めるのは「神」ではなく我々であるというメッセージだと読みとった。人為的な制御が有効なのか、時間はかかるが自然に内在する治癒力にすがるのか、大きな岐路に立たされている。
　特効薬は英語でsilver　bullet。「銀の銃弾」だ。環境問題を狼男にしてしまうような単純化は避けなければならない。魔法は存在しないのだから。

タグ天、環境問題

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