年末に店頭で見つけて躊躇なく購入した。ここ数年、「光害」への関心を高めていたからだ。(The End of Night: Searching for Natural Darkness in an Age of Artificial Lightのコメント参照) 本書は、夜という環境の破壊を取り上げた内容ではないが、間接的に、失われた日本の暗い夜への情景を募らせることになるので、長期的には「闇」の大切さの再認識を促進することになるだろう。 日本文学の作品がつづった夜の愉しみや風情を読み解きながら、日没後の外出を楽しもうという、異色の観光、いや「観闇」案内である。 光に依存してきた「啓蒙主義」で疎外されてきた陰の時間の移ろいに目を向ける著者の姿勢に賛同したい。漆黒の闇への畏怖の念を取り戻す機会にもなる。 外灯や懐中電灯がなくても、夜空の下を目視のみで逍遥することは不可能ではない。月光や星明りでしか見えない景色があることをキャンプ場で体験した学生時代を思い出させてくれた、ある意味、懐かしい一冊。 なお、深刻化する光害については、米国の一般向け科学雑誌Scientific Americanの2023年6月号で報告されている。